台湾有事で「戦場」に変わる石垣島島民の不安 ミサイル配備で高まる中国からの攻撃リスク
これまで何十年と、金城哲浩さん(66)にとっての最大の心配事は台風や害虫からマンゴーの木々を守ることだった。
だが、それは台湾から300キロメートルほどしか離れていない亜熱帯の小さな島、石垣島にある金城さんの所有地近くに日本政府がミサイル発射装置の配備を決定する前の話だ。
三大経済大国すべてを巻き込む軍事衝突
中国はここ1年、台湾周辺でかつてないほど軍事力を誇示するようになっている。そのため日本では、中国とアメリカという超大国間の紛争に巻き込まれる可能性が一段と危惧されるようになった。
石垣島に配備されるミサイルは防衛目的だ。しかし中国が実際に台湾に侵攻するつもりなのだとすれば、この地対艦・地対空ミサイルは理論上、中国軍艦隊に向けられる可能性がある。つまり石垣島に配備される自衛隊のミサイル部隊は、中国にとってはぜひともたたいておきたい攻撃対象となるわけで、そうなれば金城さんのマンゴー農園も戦火に見舞われることになる。
「これからも、ここで無事に暮らせるのかどうか」。自宅でそう語る金城さんの後ろには、「忍耐」と墨で太く書かれた掛け軸がかかっていた。
今のところ、中国が台湾との統一という宿願の実現に向けて、即座に行動を起こすと考える人はほとんどいない。それでも、民主的な統治下にある台湾の運命をめぐって、アメリカと中国は緊張を深めている。アメリカは日本の最大の同盟国であり、世界の三大経済大国すべてを巻き込む軍事衝突のリスクが増している。
石垣島のミサイル基地は、南西諸島における大規模な軍事力増強計画の一部であり、その背景には中国に対する日本側の見方の変化がある。この変化は台湾情勢の緊迫化に伴って加速した。