台湾有事で「戦場」に変わる石垣島島民の不安 ミサイル配備で高まる中国からの攻撃リスク

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日本の政策担当者の中には、台湾有事となれば、中国に尖閣諸島ばかりか、ほかの沖縄諸島を奪う機会を与えることにもなりかねないと危惧する声がある。中国は現時点では沖縄諸島の領有権を主張していないが、過去には領有権を主張したことがある。中国の学者や国営メディアには沖縄の日本帰属に疑問を呈する論文や記事を発表する動きも見られる。

こうした状況の中、日本のタカ派は、長らく停滞していた平和主義憲法の改正を一段と大胆に追求するようになっている。中国の行動によって地域の安定が脅かされかねないという立場だが、こうした主張を後押ししているのはアメリカ政府だ。アメリカは、日本に防衛上もっと大きな役割を果たすよう促している。

日本は台湾をめぐる紛争に巻き込まれかねない

安倍晋三元首相は12月初め、安全保障関連のシンポジウムでオンライン講演を行い、「台湾有事は日本有事」であり、ゆえに日米同盟の有事でもあると述べた。とはいえ、台湾をめぐって紛争が発生した場合、現行法の下で日本がどのような行動を取れるのかは定かではない。

日本は憲法で定められた自衛権の範囲内で軍事的な備えを進めている。日本政府は特定の国に対する備えだと示唆することを慎重に避けているが、軍事費を増額し、アメリカをはじめとする同盟国との軍事演習も増やしている。

日本の防衛省は、2022年度予算編成に際し、急速に悪化する安全保障環境への対応を理由に防衛費の大幅な増額を要求した。2021年度補正予算で積み増された防衛費には、石垣島のミサイル配備を加速させる資金も含まれている。

石垣島ではこれまでもミサイル配備をめぐって意見が分かれていたが、台湾有事の可能性が強まるにつれて、身の安全に対する恐怖が一気に高まってきた。ミサイル配備に反対している石垣市議会議員の長浜信夫氏は、アメリカと同盟関係にある「日本は台湾をめぐる紛争に巻き込まれる可能性が高い」と話す。

ミサイル以前に、中国をことさらに刺激する安倍氏のような発言は、石垣島が中国に攻撃される危険性を高めるだけだと長浜氏は主張する。石垣島には「軍事転用可能なインフラ計画がたくさん存在する」ためだ。

(執筆:Ben Dooley記者、Hisako Ueno記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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