コロナ禍で膨張「違法漫画サイト」駆逐できぬ元凶 市場規模を上回る7800億円以上の損害額

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――どうして、違法漫画サイトはなくならないのでしょうか。

違法漫画サイトは今、海外で運営されているケースが多いです。今、問題となっているのはベトナムです。

相手が海外の場合、著作権法などの日本の国内法は効きません。ですから、外国の捜査機関にお願いするか、外国の裁判所に開示請求をして、運営元を突き止めて、警告し停止に追い込むしかありません。費用も何百万円、時間も1~2年以上かかる場合もあります。

正直、手間もかかるしお金もかかる。けれども、漫画を買ってくれる人が「お金を払って漫画を買うのは馬鹿らしい。海賊版サイトでいいじゃん」と思わないように、私たち出版社はあきらめてはだめなんです。

――いまABJとして取り組んでいる違法サイト対策を教えてください。

刑事告訴や裁判所への提起は、個社の役割です。一方、ABJでは、出版社や著者、電子書店、通信事業者と連携して個社ではできない海賊版対策を続けています。

その1つが海賊版サイトのリスト化です。現在までに400サイトほどをきちんと証拠収集したうえでリスト化できました。それを会員の出版社や関連団体、関連事業者に提供しています。サイト削除要請やフィルタリングによるアクセスの抑止、ネット広告の出稿停止などに活用してもらうためです。

ユーザーに閲覧をやめてもらう取り組みも

違法漫画サイトの利用ユーザー向けには、閲覧をやめてもらう取り組みをしています。例えば、過去に違法漫画サイトを検索したことがあるユーザーには、TwitterやYouTubeを利用しているときに啓発バナー広告が表示される取り組みも実施しました。

そのバナー広告は24種類。『鬼滅の刃』や『キングダム』、『七つの大罪』といった人気作品のキャラクターが、違法漫画サイトの利用防止を訴える内容です。かなりインパクトがあると思うのですが……。

表示されるバナー広告。左から鬼滅の刃、キングダム(どちらも集英社)(画像:「STOP!海賊版」#きみを犯罪者にしたくない公式HPより)

ほかにもCODA(コンテンツ海外流通促進機構)、マンガ・アニメ海賊版対策協議会と連携して、大人気アニメ『ケロロ軍曹』と映画館でおなじみの「NO MORE映画泥棒」とのコラボレーション動画を放映することになりました。この12月24日から関東圏75の映画館で公開され始めています。これは映画業界団体の協力を得てできた取り組みです。

でも、どうなんでしょうか。中学校や高校を訪問し、「絶対に違法サイトを使わないでね」と話すと「わかった!」と返ってきます。バナー広告も1億以上のインプレッションがありますし、多くの人に呼びかけはできていると思います。

しかし、そのような取り組みを実施していても、海賊版サイトへのアクセス数は4億回になってしまいました。戦いは非常に厳しいですが、長期的な戦いは覚悟のうえで、2022年も違法漫画サイト撲滅や利用抑止に取り組んでいきます。

取材:板垣聡旨=フロントラインプレス(Fromtline Press)所属

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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