超新星「東大発ベンチャー」に漫画界が見る光明

革新的な「自動翻訳」で世界同時配信に挑む

マントラの自動翻訳ソフトでの英語への翻訳例。違和感のない訳文だ。©Mitsuki Kuchitaka
“LIKE I SAID!”
“I SAID I DON’T KNOW!”
“I DON’T KNOW ANYTHING ABOUT DEBTS!”
「だからっ」
「知らないって言ってるだろっ」
「そんな借金なんて」

冒頭の英文は、日本語で書かれたある漫画の吹き出し内を翻訳したものだ。違和感のない口語訳だが、これを訳したのは人間ではなく、漫画に特化した自動翻訳システムだ。

このシステムを開発しているのが、今年1月に設立されたばかりのベンチャー・MANTRA(マントラ)だ。6月には、ソフトバンク系、DMM.com系のベンチャーキャピタル、エンジェル投資家などを引受先とする第三者割当増資により、約8000万円の資金調達を実施した。『週刊東洋経済』8月17日発売号「すごいベンチャー100 2020年最新版」でも、エンタメ業界の注目企業として紹介している。

調達した資金を活用し、7月下旬にリリースしたのが、同社初の製品となる漫画の自動翻訳システム「マントラエンジン」。同システムの特徴は、吹き出し内の文字やコマの中に記された擬態語・擬音語の文字認識と、その自動翻訳に対応しているところにある。

翻訳作業にかかる日数を半減

自動翻訳の結果に人の手による修正や校正を加えることで、翻訳会社に発注すれば10日ほどかかる作業を半分の5日ほどに短縮できる。通常ならコミック1巻あたり数十万円かかる費用も大幅にカットすることが可能だ。現在対応している言語は英語と中国語(簡体字)だけだが、今後増やして行く予定だという。すでに『ガラスの仮面』『3月のライオン』などの漫画で知られる白泉社が一部の作品で同システムの利用を始めている。

石渡CEO。幼少期の体験が、起業の原動力となった

マントラを友人と共同で創業したのが、CEOの石渡祥之佑氏(28歳)だ。

漫画翻訳システムのアイデアを着想したのは、東京大学の大学院博士課程3年に在籍していた2018年のこと。人間が日常で使っている言葉をコンピューターに処理させる「自然言語処理」の技術を研究していた石渡氏は、その技術を応用させる形で漫画の自動翻訳ができないかと考え、「研究の傍らに夏休みの自由研究のような感じで開発を始めた」(石渡氏)。パートナーとして、同じ大学院に在籍する画像認識技術が専門の日並遼太氏(現・CTO)も参画した。

2人は、東京大学の起業支援機関が主催する事業アイデアコンテストへの出場や、大学構内にあるインキュベーション施設などの利用を通じ、少しずつ技術を高度化させていった。それが評価され、東大系の起業支援プログラムから500万円、経済産業省のプログラムから1000万円の支援を獲得。今年1月に起業にこぎつけた。

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