コロナ禍で膨張「違法漫画サイト」駆逐できぬ元凶 市場規模を上回る7800億円以上の損害額

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――出版業界から見て、違法サイトが与える漫画業界への影響をどう見ていますか。

違法漫画サイトがはびこっている状況下では、漫画界に才能が集まってこないおそれがあります。新人漫画家の単行本は最近、電子版のみでしか配信されないケースが増えています。それを違法漫画サイトが掲載したら、正規の電子版は購入されないですよね?

漫画には労力が掛かっています。コミックスの1ページで、情報量は100あると言われています。作者は文字だけではなく、描写で細かい情報を伝えようと必死なのです。

それなのに「漫画は違法漫画サイトで読めて、正規版を出しても売れない職業」と思われてしまうと、漫画家の志望者も減るわけです。

ネット広告費だけでは成り立たない

――サブスクリプション(定期購読)や広告収益モデルの形では、音楽やアニメとくらべると漫画は少ないです。なぜでしょうか。

そのあたり、確かに出版界の努力が足りない部分もあります。より読者に支持される仕組みを整備していく必要があるでしょう。

しかし、サブスクや広告収益モデルに転じたとしても、もっと面白い漫画文化が構築できるかは少々疑問です。漫画は作品数も多く、少数のファンに単行本を「買っていただく」ことでも成立するビジネスです。

また海賊版でタダ読みする人が正規のサブスクサービスに来てくれるのかも懐疑的です。広告モデルもそう。出版社や書店関係者などを含めて漫画業界はこれまで発展してきたわけで、ネット広告費だけでは成り立たないのではないでしょうか。

――自宅にいる時間が増加したことで、漫画を読む時間が増えたことはわかります。でも、どうして人々は違法漫画サイトにアクセスしてしまうのでしょうか。

ネット上にあるデジタルコンテンツへの“軽さ”かもしれません。道を歩いていて畑が道路脇にあるとします。そこには農産物の無人販売所があり、メロンやスイカが売られています。100人が目の前を通ると、99人は勝手に盗らないでしょう。書店でも漫画の万引きなんて、普通はしません。

ところが、それがネット上になると、50人近くが盗んでしまう。「あ、漫画がただで落ちている」となって、簡単にタダ読みされてしまうんですね。総務省による2019年5月のwebアンケートでは、電子の漫画ユーザーのうち「インターネット上で漫画を閲覧するために、マンガ海賊版サイトにアクセスしたことがあるか」という問いに対し、海賊版サイトへの閲覧などの経験が「ある」と答えたのは、15~69歳の47.5%に達しました。

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