遠藤:わからなくはないですね。大学の先生としたら、自分たちが今までやってきたことを、ある意味否定されてしまう部分がなくもないわけですし。高校の先生も年配であればあるほど、自分たちが新たな努力をしなければならなくなるからと反対しがちになる。そんな気持ちはすべてよくわかるけれども、「今やらないと」ということなのですね。
安河内:私は大学入試改革の問題を20年ぐらいにわたって見てきているのですが、今回、失敗したら、もう後がないだろうなと思うんですね。今回が、おそらく戦後いちばん大きな改革の動きになっています。何よりももし失敗すると、急激に変わる世界の中で、日本がほかのアジアの国々に大きな後れを取ってしまうだろうと危惧しています。日本のグローバル化は頓挫するでしょう。だから、今回は世間の関心も高いのだと思います。
遠藤:そうですね。昨年3月にTOEFL試験の導入案を出したときの反応の大きさといったらすごくってね。びっくりしましたよ。
安倍総理も応援、国を挙げて取り組むことに
安河内:でも、結果的には、昨年「TOEFLでいく」と言ってもらえてよかったです。あのとき大騒ぎになったからこそ、ここまで来ることがでたんですから。遠藤議員や三木谷会長に、ありがとうございます、と心の底から言いたいです。三木谷さんの話によると、今回は安倍総理大臣もかなり関心を持たれているということなので。
遠藤:総理と私は、当選が同期で昔から一緒なので、ことあるたびに話をしているんですよ。党でグローバル人材にはTOEFLでという話をしていたときも総理にやりますと伝えたら、「そりゃいいね」ということでね。そして、追加して総理から提案があったのは、国家公務員キャリアの採用試験でもTOEFLをやらせようというものだったのです。来年あたりから始まるんじゃないかな。
安河内:国家公務員や高級官僚というレベルの人はTOEFL iBTやIELTSでいいと思いますよ。
4技能に逆行する動きも!?
安河内:4技能化の波は確実に来ているのですが、それに逆行する現象も生まれてきてしまっています。来年から、みなし満点の措置を取ると発表している大学もあります。具体的には英検の準一級かTOEIC750点以上で大学入試センター試験の英語科目を満点とみなしますよ、というようなプランですね。せっかく4技能試験という話になっているのに、2技能のTOEICテストもOKにしているのが残念です。また、TOEICは対象とする言語領域が学習指導要領とかなりずれています。そのあたりの情報が大学側に不足しているように思います。
遠藤:TOEFLとTOEICは違うのに、両立できるというような話をよく聞くので、勘違いしている人が多いのかなと思いますね。
安河内:高校生にTOEICテストをやらせるというのは、すごく違和感を感じます。2技能であり、しかもビジネスパーソン向けの試験ですよ、TOEICは。経営会議や顧客応対セミナーの内容や在庫管理についての英語に関する問題を高校生にやらせるっていうのは、おかしいと思います。TOEICテストを採用するというのを見ていると、大学関係者もよくわかっていない気がします。ただ普及している試験だから採用しただけという印象を受けます。
遠藤:かもしれないね。日本と韓国ぐらいでしょ、TOEICを使っているのは?
安河内:使われている国はどうであれ、TOEIC試験自体はとてもいい試験だと思います。リーディングとリスニングの2技能だけを測る試験としては。けれども、TOEICは仕事で使うビジネス英語を試すものなので、高校生を対象にして使おうというのは的外れに感じます。
遠藤:そのとおりだね。大学入試の4技能化はある国立大学でもやるとのことだから、さらに主要な大学が追随すれば、流れは4技能化にぐっと傾きますよ。
安河内:キーになるのは、東京大学や京都大学などですね。
遠藤:早稲田、慶応とかね。となれば、すぐ変わりますよ。
安河内:まだここでは大学名を挙げらないんですが、主要大学の一部の学部からはTEAPを使うことに興味を示しているところもかなりあるそうです。4技能化の波は確実にすぐそこまで来ているという手応えを感じています。
(構成:山本 航、撮影:上田真緒)
※次回は10月22日(水)に掲載します。
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