(第53回)【2011年度新卒採用戦線総括】ターゲット採用の一方で、大量の学生をWebテストで不合格に

●膨大なプレエントリーをWebテストで不合格に

 「ターゲット大学、学部、学科」を決めている企業は明確な採用戦略を持って計画を立て、実施している。その実行には多くの時間と手間を取られている。しかしそれは前向きで健全な採活といえる。
 ところがもう1つの採用課題がある。就職ナビからの膨大なプレエントリーである。ターゲット学生は数万人程度しかいないが、卒業生は55万人くらいいる。ターゲットになっていない50数万人の就活はプレエントリーから始まる。
 どの企業も「オープンエントリー」「大学不問」を標榜しているから、学生は自分でも大丈夫と思い、「とりあえずエントリー」するのだ。

 プレエントリー数は増加している。2011年採用では「昨年(2010年)から2倍以上になった」と回答した企業が3分の1に達している。実際のプレエントリー数を調べると、2010年で最も多かったのは「501~1000人」、2011年は「1001~2000人」になっている。
 この程度の人数なら全員のエントリーシートを読み、さらに面接することも不可能ではないだろうが、5000人を超えて数万人の規模の企業も多く、この数になると人事のマンパワーをはるかに超えている。

 そこで「母集団のスクリーニング方法」が重要な採用課題になる。「スクリーニング(screening)」とはふるい分けること、選抜、選別のことで、最も普及している方法はWebテストだ。人事が問題を作成することはなく、業者に依頼して実施している。
 Webテストによる採点基準を公開している企業はないが、おそらく業者のシステムが自動的に採点し、点数によって合否を決めていると推測できる。
 テストの内容は企業によって異なるが、いわゆるSPIテストに準じている。心理特性も調べられるが、国語力、英語力、社会常識、数理能力も測られる。

 Webテストの合格率は公開されておらず、正確なデータは存在しない。しかしプレエントリーの次はエントリーシートになるので、数千、数万というプレエントリーの数と、エントリーシートを読むことのできる学生数を計算すれば、平均7割程度をはねているのではないかと思われる。数万のプレエントリーがある企業なら9割以上になるだろう。

 Webテストはそれほど長い歴史を持っているわけではない。現在のWeb就活(採活)システムは、ブロードバンドが普及し始めた2000年代になってからのことだが、その頃は会社説明会の後にペーパーテストを実施し、エントリーシートを書かせていた。Webテストが一般的になったのはこの6、7年のことだ。
 2011年度採用では、学生が助け合ってWebテストを解いたり、親が解答を教えたりする事例が判明している。「他人が解いて提出できる」という本質的な欠陥があるが、他に大量プレエントリー学生をスクリーニングする方法がないから、これからも使われていくだろう。

 しかし、どうも現在の就活・採活はヘンである。一方では、就活学生が大量にプレエントリーし、企業はWebテストによってスクリーニングする。他方で企業はターゲットとしている学生が集まらないと嘆いている。これは大きな断層に見える。次回はこの断層について考えてみたい。
HRプロ株式会社(旧社名:採用プロドットコム)
(本社:東京千代田区、代表取締役:寺澤康介)
採用担当者、教育・研修担当者をはじめとしたHR担当者のための専門サイト「プロ.com」シリーズを運営。新卒/中途採用、教育・研修、労務、人事戦略などの業務に役立つニュース、ノウハウ、サービス情報、セミナー情報を提供している。HR担当者向けのセミナーも東京・大阪で開催している。
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