住友商事、「資源」で高値づかみの大失敗 米国のシェールオイルなどで2400億円の減損

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住商の経営陣は下方修正で深々と頭を下げた

中村社長は住友商事固有の事情についてこう述べている。

「うちの資源事業のポートフォリオは非鉄金属に偏っており、かねてから金属分野、石油・ガス分野の権益拡充が課題だった。その一環で、他社がまだ手を付けていなかったシェールガス・オイル事業に、当社の石油・ガス事業強化の希望を託すことになった」。

だからといって、「無理して投資をしたわけではない」と中村社長は弁明する。しかしながら、シェール革命に乗り遅れまいとするインセンティブは、同社の場合、ひときわ大きかったのは事実だ。

もうひとつ抱える大きな”爆弾”

実は、住友商事は資源事業で、さらにおおきな”爆弾”を抱える。それがアフリカのマダガスカルで、カナダ、韓国企業と共同開発を進める、世界最大級のニッケル開発事業、通称「アンバトビー・プロジェクト」だ。計画を華々しく打ち上げたのは2007年のことだった。当初は10年後半に生産開始すると豪語していたものの、ニッケル価格低下や、現地の政権交代、採用する生産技術の複雑さなどが相まって、延期が続いた。

そして今年に入って、ようやく生産を始めたが、現在も計画より3~4割低い生産量にとどまる。開発投資は積み上がり、簿価は2000億円近くまで膨れ上がっている。2015年6月にはアンバトビー・プロジェクトの完工(90%稼働)を見込むが、今後の計画進捗次第では、これも大きな減損を生む恐れがある。

アンバトビー・プロジェクトだけでなく、ここ数年の同社の資源事業を引っ張ってきたキーマンは、ほかならぬ中村社長自身だ。今回、減損対象になった資源権益にも、中村社長が資源・化学品事業担当の専務・副社長時代に行った案件が含まれている。

会見の席上、経営責任について問われた中村社長は、「一刻も早く巡航速度に戻すのが私の責務。投資決定のプロセスに問題があるとは思っていない」ときっぱり否定した。ただし、今後さらなる資源事業の下振れ、業績の再下方修正があった場合、経営責任を問う声は内外から高まってくるかもしれない。

(撮影:尾形文繁)

西澤 佑介 東洋経済 記者

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にしざわ ゆうすけ / Yusuke Nishizawa

1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長

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