中国を閉め出すことは 先進国経済を減退させる--エドワード・スタインフェルド マサチューセッツ工科大学准教授
──現在の政治体制、一党独裁を維持したままで、中国が経済発展を続けていけると思いますか。
中国は経済的な変化は遂げたが、政治的には何も変化していないと考えるのは大きな誤解だ。確かに、今でも中国共産党による一党独裁という政治基盤にあるが、ここ15年間で二つの大きな変化が起きた。
第一に、過去には党員になれなかった人たちにも、党は門戸を広げている点だ。私が中国に住んでいた1989年当時は、高度教育を受けた、いわゆる知識人階級は党のメンバーには決してなれなかった。彼らは同年6月の天安門事件後、中国から離れよう、とりあえず子どもは中国から出国させようとしていた。今は、こうした知識人も党員になれる。
二つ目の大きな変化は、一般市民社会が非常に花開いたことだ。かつての中国国民は、すべて国の刷り込みをそのまま映し出していた。特に都市部の住民は、どこそこの国営企業に勤め、この仕事をしなさいと、国から割り当てられ、何をするのにも国の許可が必要だった。ヒエラルキー(階層)社会の中で、最下層として生きるのが中国国民の人生だった。今は、このヒエラルキーは壊れてしまった。階層社会がオープンマーケットに取って替わったのだ。
政府として、いちばんやらなければいけない問題は、一般国民が政府のルールに従う、コンプライアンス社会を構築することだ。普通の生活を秩序をもって送れるようにする社会の構築だ。それには、政府は国民に対して、しっかりとしたパフォーマンスを届けなければいけない。国民が求めているものを与えなければいけないのだ。そうしなければ、国民は国に従わないからだ。
また、昔は中国で成長といえば、国家の成長と決まっていたが、今では、個人に成長をもたらすと政府は言っている。政府が本心から言っているのか、それともある意味、皮肉を込めて言っているのかわからないが、中国国民が個人としての成長を期待しているのは確かだ。