(第28回)「失われた15年」で拡大した所得格差

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 たとえば、95年に800万~900万円の世帯比は6・3%であったが、07年には700万~800万円の世帯比率が6・3%になっている。つまり、平均所得以上の階層では、どの階層でも所得がこの12年間に100万円ほど低下したと解釈することができる。

同じ率ではなく、同じ額だけ低下したので、低所得ほど低下率は高くなる。たとえば、100万円の低下は、1200万円なら8・3%だが、700万円では14・3%になる。他方で、物価下落は誰にとっても同じだ。

したがって、低所得では実質賃金が大きく下落したが、高所得では実質賃金はさほど下落しなかった。さらに、高所得世帯の比率もあまり変わっていないことが注目される(所得1000万円以上の世帯比率は、95年が18%で、07年が12%)。

なお、ここで行ったのは、2時点の所得分布データの比較である。したがって、先ほど「95年の所得が800万~900万円だった世帯の所得は07年に700万~800万円に低下した」と述べたが、それは「そう解釈できる」ということに過ぎない。

95年に所得が800万~900万円だった世帯と07年に700万~800万円だった世帯は、別の世帯である可能性もある。特定世帯の所得が時系列的にどう変化したかを知るには、同一の家計を追跡調査する「パネル・データ」が必要である。

また、ここで見たのは各階層の世帯比であるが、世帯総数はこの間に増えていることにも注意が必要だ(95年の4077万世帯から07年の4796万世帯へ)。増加率は、この間の人口増加率(約2%)より大きい。つまり、世帯は細分化されたことになる。特に低所得階層において、高齢者や若年者の単身所帯が増えた可能性がある。

低賃金への底だまり現象

95年と07年の比較で第二に注目されるのは、平均所得より低いところでは、これとは異なる現象が生じていることだ。すなわち、600万~700万円以下では、グラフは左ではなく、左上方にシフトしている。特に400万~500万円以下でそれが顕著である。

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