関西国際空港の挑戦[4/最終回]--伊丹との統合は実現するか、「関西3空港問題」のゆくえ
関空の経営問題に曙光
とはいえ、長年放置されてきた関空の経営問題に対して、明確な方針を打ち出した政府案を評価する声は少なくない。バークレイズ・キャピタル証券の江夏あかねアナリストは「空港運営の民営化については、イギリスやドイツなどで事例がある。関空も民間の知恵をフル活用することにより、経営の抜本的効率化を図ることができるのでは」と語る。
民間の知恵を活用しつつ、伊丹空港を維持したままで3空港の経営を統合する道を探るのが、現実的な落としどころかもしれない。
仮に政府案が採用されたとしても、民間への売却先や売却金額をめぐって紆余曲折することも予想される。
だが、ドル箱の羽田便を抱える伊丹空港の利益(06年度は約80億円の経常利益を計上)と、ビル運営会社の利益(09年度は売上高204億円、営業益9億円を計上)を統合すれば、巨額の有利子負債を抱える関空の経営再建への道は見えやすくなる。
関空は現在、政府からの年間75億円の補給金を原資に着陸料割引などの時限措置を展開しているが、経営統合が実現すれば、伊丹空港のキャッシュフローを活用して恒常的に着陸料の値引きが可能になる。
そうすれば、アジアとのネットワークのさらなる拡張や、LCC(格安航空会社)の誘致にもつながる。その結果、外国人客を増やすことも十分可能だろう。関空が国際線で潤えば、地元の反対を押し切ってまで伊丹空港を閉鎖し、国内線需要を伊丹から関空に強引に移す必要もなくなる。