関西国際空港の挑戦[4/最終回]--伊丹との統合は実現するか、「関西3空港問題」のゆくえ
「関西」、「伊丹」、そして「神戸」。関西では半径20キロ圏内に3つの空港が近接している。地域経済の環境が厳しさを増す中で、この3空港は国内線の需要を奪い合う状態になっている。この「関西3空港問題」対策として、国土交通省が打ち出した政府案と、地元の経済界や自治体がまとめた合意案との間には、「ねじれ」とも呼べる現象が起きている。
関西3空港問題は、関西国際空港を長らく悩ませてきた。もともと、関空は1994年、大阪国際(伊丹)空港の騒音問題を解決するために開港した。ところが、騒音問題が鎮静化したこともあり、当初は廃港を前提としていた伊丹空港はそのまま存続。さらに、2006年には神戸空港も開港した。
大阪の中心部近くに構える伊丹空港は、環境問題を背景に運行時間(午後9時まで)やジェット機運行本数(1日200便)が制限されている。国際線の定期就航も認められていない。ただ、大阪市内へのアクセスがよいことから、需要は底堅く推移している。
3空港でいちばん新しい神戸空港も、国際線の就航が認められず、発着便数が1日30便と制限されているが、目下の搭乗率は全体平均で7割を超える(09年度は70.9%)。地元密着型の営業が奏功し、利用客の実に8割近くが兵庫県民である。
就航便も増えており、「今年4月から、既に10便が新規就航した。9月にスカイマークの鹿児島便が就航するなど、秋以降もどんどんつながりますよ」(神戸市空港事業室・牧野考志主査)と勢いづいている。
伊丹、神戸の機能を制限し、国内線の需要を関空に移し、その経営を立て直す。これが3空港問題対策としてのこれまでの構図だった。が、需要は容易には関空に移らない。伊丹空港は、05年以降もエンジン3基以上のジェット機の発着を制限するなど、機能を縮小しているが、08年度と09年度の利用客数は再び伊丹が関空を上回った。