──この本のデータ分析では東京都豊島区も「消滅可能性」のある自治体になっています。
今のままなら東京でも、たとえば豊島区は2040年には消滅しかねない。豊島区には、埼玉県からの社会的移動があればこそ人口を確保できてきたが、そうもいかなくなる。今回の分析は若年女性(20~39歳)人口の減少率(10年→40年)において、その率が5割を超える推計の自治体を「消滅可能性都市」としたものだ。日本では生まれる子どもの95%をこの若年女性層が産んでいる。
──自治体ごとの2040年の姿が一覧できます。
岩手県知事の時代にいちばん欲しかったのが、市町村ごとのこの種のデータだった。国全体で人口が減るといわれ、県レベルの予測もできることはできるが、それに対して制度設計をどうするかとなったときに、せめて市町村ごとの減り方の見当がつかないと、住民の皆さんになかなか納得してもらえない。
地域ごとに特徴がある
──市町村によって、増減はもちろん一律ではありません。
岩手県でいえば盛岡市には周辺の市町村から若い人が集まる。盛岡市も人口は減るが、近隣県都の秋田市や青森市とは違って消滅可能性都市には入っていない。同じ県都でも、また同じ県内の市町村でもそれぞれ様子が異なる。だから、どういう人口推計になるのか、粗い数字でも欲しいと思っていた。
昨年3月、政府の研究機関によって市町村ごとの推計が出されたので、これを私の属する日本創成会議なりにリアルな形にして、東京一極集中は止まらないという前提なども取り込んで、40年時点での姿を描いてみた。
──もともと出生率には地域差があります。
人口学者に聞くと、九州が高いのは結婚時期が早いからと。結婚時期がなぜ早いのか、この理由を追究しないといけないが、8割程度が消滅可能性都市に当てはまる北海道、東北地方は近年時期が遅くなり出生率も低い。たとえば北海道は札幌市内に若い女性が集まっているが、男性は道外に出て少なくなる。これに対して東北は、特に農村部に男性はけっこういるが、若い女性が少ない。こういう具合に結婚・出産の適齢と思われる年代層のいる割合は地域でだいぶ違う。
──政策が5年遅れると、人口が全国で300万減るペースになるのですか。
どこで減り、それが積み上がっての300万人なのかをはっきりさせたい。そこがカギだ。現状認識の差が対策を遅らせたり、間違った方向に行かせたりする。人口が増える自治体はもう本当にわずかだ。てきめんにあおりを受ける社会保障が全滅することのない形にしなければいけない。
──来年は国勢調査の年です。
人口の減った現実がはっきり見えてくる。また地域間のバランスの崩れもはっきり見える。東京へ人が集まる状況はまだ変わらず、地方がそうとう減る形だろう。
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