神田駅周辺、変わらないでほしい「下町の風景」 ほかの再開発エリアと同じ街並みはつまらない

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ご多分に漏れず、この町にも再開発の話が持ち上がっている。ただ現状、まだ具体的な計画が策定されているわけではない。千代田区の資料によると、神田駅前で再開発対象と目されているのが神田駅西口の内神田2・3丁目で、まさに西口商店街を中心とするエリアだ。

神田駅西口商店街の入り口(筆者撮影)

現在は「神田駅西口地区まちづくり市街地再開発準備組合」が結成され、地元の地権者が「神田らしさを感じるような、街づくり」を協議している段階である。新橋もそうであるけれど、今の神田駅周辺の魅力は、言うまでもなく気安い雰囲気だ。

町の魅力を失ってしまっては再開発の意味はない。防災力の強化や「歩ける街並み」の整備は必要だが、新橋駅の記事でも述べたけれど「水清ければ魚棲まず」なのである。神田が大手町や、ほかの再開発エリアと同じような町になってしまってはつまらない。

大手町との回遊性が向上する?

内神田1丁目では、2021年6月18日に国土交通省が「内神田一丁目計画(仮称)」を、民間都市再生事業計画として認定した。事業者は三菱地所。鎌倉橋と神田橋に挟まれた日本橋川の北岸に地上26階、地下3階の高層ビルを建てる計画である。大手町との間は、回遊性の向上をうたい人道橋で結ぶとのこと。2022年に事業着手し、2025年末の完成予定だ。

電線の地中化が完成した多町大通り(筆者撮影)
大手町エリアと神田エリアの間を分かつ日本橋川(筆者撮影)

神田駅の北側に目を転じると、多町大通りなどの電柱地中化と歩道拡張事業が完了しており、景観としてはすっきりした。公共施設や民間ビルの耐震化を進めるなど、災害対策はしっかりするとして、町の整備事業はこのぐらいにとどめておくのが適当ではないかとも思う。

東京メトロ銀座線の神田駅は、内神田方面改札口がJR神田駅への乗り換え通路につながっておりにぎわっているが、浅草寄りにある須田町方面改札口はさほどでもない。開いている時間も7時から21時までと、早じまいだ。JR神田駅周辺と比べて、こちら側は純粋なビジネス街で、遅くまでにぎわう飲食店が少ないことも影響しているだろう。一種の空白地帯と言えるかもしれない。

だが、戦前は須田町側のほうが、はるかににぎやかな繁華街であった。銀座線神田駅の須田町方面改札口を出ると細長い通路が先へと通じており、いちばん遠い6番出口は須田町交差点の側にある。その途中、地下道に沿って2011年まで地下商店街があった。

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