専門家に聞く「まともな」都市鉄道ダイヤとは何か 接続のよさや乗り継ぎの利便、民鉄流と国鉄流

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JR西日本は比較的民鉄に近い思考ができる組織だと思いますが、それは国鉄時代に、関西駐在理事が丸の内(国鉄本社)に向けて多くの提案をしては潰されてきた長い歴史の上でのことです。

そういう歴史があるから、民営化後に積年の恨みを一気に晴らすようにいろいろなことをやった。これは井手さん(井手正敬氏、元JR西日本社長・会長を歴任)という人の功績だと私は思っているわけです。「井手商会」と悪口を言われていましたが、これまでずっと民鉄に負けていたのを取り返すためにはどうしたらいいかという点では、いいことをたくさんやっています。

民鉄流と国鉄流

――設備のお話が出ましたが、駅設備についてはいかがですか。

JR(国鉄)の駅は非常に不便な設計がされている例が多いですね。民鉄だと、追い抜かれる列車が追い抜く列車に対して同じホームで乗り換えできなければ接続とはいえない。国鉄流は、中線の両側がホームになっていない2面3線でも列車の待避はできるからいいじゃないかという発想です。

例えば常磐線は、北千住も松戸も待避ができます。ただ、国鉄流の構造なので北千住は上り、松戸は下りしかできない。特快に対して上りが北千住で待避、下りが松戸で待避するというのはそういう制約の中でダイヤをつくっているからであって、その制約の中ではよくできているかもしれませんが、逆に言うと同じホームの向かい側で接続ができる駅は非常に限られています。

これでは何か起きた時に使い物にならなくなるわけです。常磐線の場合、例えば中距離電車が動けないという時に北千住と松戸の中線に中距離電車を何時間かそこに止めていたりする。関西で、邪魔になる貨物列車を有効長の長い副本線に沈めておく使い方を数少ない待避線でやっているのです。すると特急待避をしようと思ってもできなくなるわけです。民鉄はほぼ全部の待避駅が2面4線ですから、そういうことはほとんどないですね。

国鉄から引き継いだものが残っているのは仕方ない。でも、中央線は三鷹―立川間を高架線にするときにあちこちで待避設備が造られたものの、国立や東小金井は中線の両側がホームではない2面3線です。中央線でも武蔵小金井はよくなった例で、もともと3線だったのを4線にしていますが、あれは車庫に行くため、または折返用の線ですね。

2面3線でも、京浜東北線の東十条や蒲田のように中線の両側にプラットホームがあるような駅はよくできています。

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