専門家に聞く「まともな」都市鉄道ダイヤとは何か 接続のよさや乗り継ぎの利便、民鉄流と国鉄流

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都市鉄道のダイヤはどんな形が望ましいのか(写真:Graphs/PIXTA)
ダイヤがパターン化されて接続などもわかりやすい大手私鉄や関西圏のJRに対し、首都圏のJR各線はわかりにくい――。筆者はこれまで、「駅時刻表に表れない『便利な駅』の見分け方」「数分違いで大遅刻『乗り遅れたらヤバい列車』」など過去の記事でこのように指摘してきた。大手私鉄とJR、そして同じJRでも東西で違いがあるのはなぜなのか。そこでこれらの疑問や都市鉄道のダイヤのあり方について、鉄道工学の第一人者である曽根悟・東京大学名誉教授にインタビューした。

JR西、ダイヤのルーツは「阪和電鉄」

――大手私鉄やJR西日本の京阪神エリアは全体でダイヤのパターン(周期)を統一したり、同一ホームで乗り換えできるよう設備を改良したりするなどしている一方、首都圏のJR各線はそうなっていないケースが多いと思います。なぜでしょうか。

まず、JR西日本とJR東日本を比較するということ自体はあまり意味がない。実は、日本の鉄道の輸送人員は全体の3分の2が民鉄です。つまり都市鉄道の重要な大部分は大手民鉄が担当している。そこを抜きにして(都市鉄道のダイヤについての)議論をしてもナンセンスです。

ただしJRは貨物列車も走っているという点で民鉄との違いはあります。その中でJR西日本は貨物が走るような路線に関しては設備が比較的よい。それで、いざというときには貨物列車を長期間抑止できるような設備を意図的に造っています。東日本の場合はそういう用地がありながら貨物列車のために使っておらず、うまくいかないという要素はあるでしょう。

設備に関しては、JR西日本は東海道線の複々線区間が方向別であったという点が非常によかった。だから緩急接続サービスができるはずだという案は国鉄時代からありましたが、JRになってから具現化しました。

そして、それができたのは実は民鉄のおかげなんです。戦前の阪和電鉄(JR阪和線の前身の私鉄、高速運転で知られた)から引き継いだ阪和線では、昔から緩急結合輸送をやっていた。それなら東海道線でもできるはずだということで、JRになってからいいダイヤができあがった。

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