専門家に聞く「まともな」都市鉄道ダイヤとは何か 接続のよさや乗り継ぎの利便、民鉄流と国鉄流
細かい秒単位の議論を一生懸命やっているのが民鉄です。JR西日本は阪和電鉄の流儀を引き継いだこともあって、JR各社の中ではそういうことを考えているといえます。他社も、山陽新幹線と競合するJR九州の小倉―博多間もそういう考え方を採り入れてお金をかけているので、部分的には考えているところもあります。
――すると、JR西日本は国鉄時代からもともと設備がよかったところに、阪和線の民鉄流ノウハウが引き継がれ、JR化以降に他の路線にも波及したと。
そういうことです。JR東日本にも、例えば南武線や青梅線など、戦前・戦中に国鉄が民鉄から引き継いだ路線がありますが、これらの路線は緩急結合輸送をやっていなかった。戦前の阪和電鉄は南海と競争していたので、お互いに張り合っていいものをつくろうとやっていました。その路線を引き継いだのが非常に大きいと思います。その点で、東日本の路線は民鉄のよさを持っていなかった。
ダイヤの周期については、JR西日本の15分周期に関していえば、実は京阪から習ったわけです。阪神は12分、京阪は15分か20分かという議論をして、20分だとやっぱり時刻表なしではうまく乗ってくれない。15分がまともな周期の最長値であるという学習をした結果です。
利用パターンが身につくダイヤを
――どんなダイヤが「まとも」といえるのでしょうか。
要するに、いつもこのくらいの時間をかければ目的地に着けるはずで、そのためにはこういうパターンで乗ればいいということが、多くの利用者に身につくようなダイヤが「まともなダイヤ」です。
例えば京王線で新宿から八王子に行こうという人は、各駅停車には乗らないわけです。ところが中央線で八王子に行こうとすると、来た電車に乗ったほうがいいのかどうか調べないとわからない。特快でなく快速が来ても、これが一番最初に八王子に着くというケースがかなりある。そうかと思うと、特快が比較的短い間隔でまた来た、ということもないわけではない。これを、八王子に最速で着くには必ず特快に乗りなさいというようなダイヤにしてあれば、新宿から八王子までいつも特快の所要時間で読めるわけです。
――実際、そのようにパターン化されていない路線は多いと思います。そのせいで、間隔が開いて特定の列車に混雑が集中する弊害もあります。
戦前からの比較的まともな設備を引き継いでいる中央・総武線の御茶ノ水駅は対面乗り換えができる設備がありますが、夕方のラッシュ時に千葉方面行きの総武線各停が何本の中央線快速から乗り換えの乗客を受けて発車するかというと、その本数が0だったり3だったりする。そうすると、3本受けて出た千葉行きは混雑によって途中駅で遅れやすい。だから全部1対1とか2対1とか、あるいは最大2本、最小1本の乗客を受けるといった規制をすればもう少しうまくいくでしょう。
京浜東北線の昼間の快速運転も評判はよくないですが、山手線と周期を同じにしてどの駅で接続するかが決まっていれば、非常に使い勝手がよくなるでしょう。
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