専門家に聞く「まともな」都市鉄道ダイヤとは何か 接続のよさや乗り継ぎの利便、民鉄流と国鉄流

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国鉄時代の姿でいうと、首都圏の路線は東京北鉄道管理局、西局、南局と分かれて管理していました。でも浅草橋や両国は千葉鉄道管理局です。別会社だと思ったほうが実態には合っていたわけです。中央・総武緩行線は西局、北局、千葉局と3つの局にからんでいた。自局の遅れを他局に持ち越したくないという意識があってか、あるいはそれぞれの局がやりたいダイヤを作って持ち寄って、こう繋げましょうと議論をしたに違いない。結果として間隔がバラバラになって、接続が0本だったり3本だったりということになっていたわけです。

――例えば、湘南新宿ラインと上野東京ラインも大宮駅で接続できないケースが多いです。

こういうのは関係者にも(接続させることへの)賛成派と反対派がいて、賛成派はとにかく便利にしようという話で、まともな議論だと思います。反対派も理屈はあって、例えば片方のダイヤが大幅に乱れたときも接続を取ることにしておくと、その周期分の時間が無駄になります。

そのような議論は(国全体でダイヤの周期を15分の倍数で統一している)スイスでもあったのです。スイスの場合は接続に関するルールがあって、例えば遅れが9分までなら接続するけれども、10分を超えると次のチャンスまで待たされるということが事前に知らされているのですね。

そのためスイスの場合には1分単位で駅や車内に遅れの表示が出ます。これを見ることで、現地の人は数分遅れたり、遅れで接続できなかったりしても誰も心配しないし、文句も言わないのです。遅れが18分だったらこれは接続がダメだ、30分遅れちゃうなと心構えができるわけです。時々起こるサービスダウンをちゃんと多くの人に周知しておけば、賛同は得られると思います。

民鉄のほうが長期構想がある

――西日本でも東海道本線のようにもともと施設が優れていた路線だけでなく、奈良線など設備がいいとはいえなかった路線もあると思いますが、全体的なダイヤの周期を統一しています。

奈良線は少しずつ複線化工事をして、長い期間をかけてまともな鉄道にしようという発想があります。民鉄はその発想を持っていますが、民鉄ではいずれ実現することが多いのに対してJRでそれが少ないのは、組織の硬直化や部局間の壁の高さによるものがあると思います。設備は与えられたものでその制約条件の下でダイヤを作るという考えがあるからでしょう。

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