JR西「巨額増資」、鮮明になった本州3社の優勝劣敗 不動産で東日本、新幹線収益力で東海に見劣り
JR西日本は9月1日、公募増資で財務基盤を強化すると発表した。第三者割当増資や保有株式の売り出しもあわせて行い、トータルの調達額は「8月20日時点の計算では最大2786億円」(長谷川一明社長)。正式な発行価格は9月13〜15日までのいずれかの日に決まる。公募増資はJRグループでは初めてとなる。
コロナ禍が鉄道事業を直撃し、足元の業績は最悪だ。前2021年3月期は2332億円という巨額の純損失に泣いた。だからこそ今2022年3月期の最終黒字化は必達目標だった。当初計画は営業利益120億円、経常利益は50億円の赤字。不動産売却益を特別利益に計上して30億円の純利益を確保するというものだった。
売上高が1兆円を優に超える同社においては10億円単位の黒字など、売り上げがちょっとでも減ればすぐに吹き飛んでしまう。つまり、純利益の30億円という数字は「絶対に今期は黒字にする」という経営の覚悟を感じさせるものといえた。
「運転資金は十分」主張
ところが、コロナ禍はJR西日本の想定以上に長引いた。
鉄道旅客収入の回復ペースが想定よりも鈍い。広告宣伝費の抑制などの経費抑制に加え、今期から新幹線車両の減価償却方法を定率法から定額法に変更して減価償却費を減らすといった会計上のテクニックによる経費削減策も講じたものの、想定ほど増えない売り上げを前にしては焼け石に水。7月30日には2022年3月期の連結業績予想を当初の黒字計画を815億~1165億円の純損失という赤字計画へと見直した。
業績が芳しくないことから今回の増資は資金繰り対策なのかという疑問もあるが、長谷川社長は「運転資金は十分」と、言下に否定する。7月末時点で手元現金を2600億円ほど確保しており、さらにコミットメントラインも4300億円を枠として確保しているという。
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