JR西「巨額増資」、鮮明になった本州3社の優勝劣敗 不動産で東日本、新幹線収益力で東海に見劣り

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JR東海の強みは東海道新幹線である。抜群の利益率を誇り、コロナ前の2019年3月期の運輸セグメントは売上高1兆4613億円に対して営業利益6648億円。売上高営業利益率は45%だった。JR西日本の2019年3月期の運輸セグメントの売上高営業利益率は14%である。

2021年3月期のJR東海の運輸収入は対2019年3月期比で3分の1に落ち込み、運輸セグメントが1833億円の赤字となったが、今期は対2019年3月期比で運輸収入が3分の2まで回復するという前提で、会社側は運輸セグメントが2050億円の営業黒字になると想定している。同社の利益率の高さを考えれば、コロナ禍が長引いていることより仮に今期の戻りが2019年3月期比で50%程度にとどまったとしても、損益トントン程度に持ち込める公算が大きい。

ちなみにJR西日本の運輸セグメントの今期は当初は2019年3月期比で75%程度まで持ち直す想定で96億円の営業損失とわずかながら赤字が残る想定としていたが、その後、収入は6割前後までしか回復せず営業利益は1170億〜1505億円の赤字という想定に見直している。

静岡を除く各地で建設が進むリニア中央新幹線については、その工事資金を財政投融資を活用した長期借入により調達済み。その後、難工事対応などを理由に総工事費が当初の5.52兆円から7.04兆円に増えることが発表されたが、当面の工事費は現在の借入額で賄うことができる。追加調達について考える必要が出てくるのは数年先の話だ。

株主の目は厳しさを増すか

このように不動産や東海道新幹線で強みを持つJR東日本やJR東海と比べると、JR西日本は不動産でJR東日本に見劣りし、山陽新幹線や北陸新幹線には東海道新幹線ほどの収益力はない。経営基盤が両社と比べると脆弱と受け止められるのもやむをえない。

JR西日本の車両に入ったロゴ。同社は本州3社の中では経営基盤が弱いのは否めない(撮影:尾形文繁)

また、2021年3月末時点の自己資本比率はJR東日本28.4%、JR東海37.9%に対して、JR西日本は24.5%にとどまる。こう考えると、JR本州3社の中で先陣を切って増資に動き出したのはうなずける。

今回の増資によって発行済株式数はおよそ3割弱増える。それによっては1株当たり利益が減ってしまうと、既存の株主にとって増資はデメリットだったということになる。その意味で増資に踏み切ったJR西日本は、今まで以上に株主に対して企業価値の向上を数字で示す必要が出てくる。

たとえば、同社が抱える地方の不採算路線の行方にも影響を及ぼす。鉄路の維持は社会的使命という考え方もあるが、採算性について株主からの監視の目が厳しくなる可能性は少なくない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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