柳弘之・ヤマハ発動機社長--黒字化シナリオを実現し、持続的成長で2兆円を狙う
数に依存するような商売はしない
--2輪車の成長戦略は新興国を中心に伸ばしていく計画ですね。
ASEANのうち6カ国は、現地の競合メーカーもなく、当社とホンダで9割以上のシェアを占めており、この状況は今後も続くだろう。過去、中国ブランドが入ってきた時期もあったが、結局淘汰された。
インドは、ホンダと合弁のヒーロー、パジャジ、TVSの3社の現地メーカーが激しい価格競争を展開している市場だ。日系としてはコスト管理で苦戦している。中国では現地メーカーが首位。その次にヤマハとホンダ、スズキの合弁企業がそれぞれ競い合っている。
ASEANでは、商品競争から、次は燃費の競争になるだろう。より商品競争が厳しくなるので、勝負は販売力に移っていく。まさにヤマハの強みはここにある。特にインドネシアでは直営の販路を持ち、より直接的にコントロールしやすい販売形態になっている。セールス、サービス、スペアパーツの3Sも充実させている。この点でヤマハには他社よりアドバンテージがある。
2輪車の市場はピラミッドでいうと、高級品から廉価品まで4段階に分かれる。ヤマハはどちらかというと上から二つの高級品セグメントに重点を置いてきた。商品としては、廉価品よりもオートマチックトランスミッションを搭載した高級品で市場がとれている。そこの利幅は確保できているので、あまり数に依存するような商売はしたくない。ただし今後は、従来商品よりも100~200ドル安い、もう一つ下の層にも商品投入して、顧客層を広げたい。
--最近発表された電動バイクも含め、次の成長分野をどこに求めますか。
まず、ヤマハはエンジンを得意とする会社、というのが基本路線。だから、中長期の成長はエンジンを進化させながら、新しい動力源にもチャレンジしていく姿勢で臨む。中計の中で掲げた成長戦略の中の一つがスマートパワーだ。エンジンは環境負荷が大きいので、それを新しい動力源に替えていく、または上乗せにしていくといったビジネス展開をイメージしている。