インフレ加速で肉も油も買えない「トルコ」の窮状 急激なリラ安とインフレで生活困窮者が増加
トルコの工場で働くビラルとその家族にとって、あきらめなければならないことのリストは日に日に長くなっている。1年前には肉を買うのをやめたが、最近ではガスヒーターや食用油の使用を切り詰め、子どもたちのおやつも減らさなければならなくなった。
ビラルと妻はすでに多額の借金を抱えており、この2カ月でインフレが急激に進んだことから、こうした犠牲を増やしても生活が成り立たなくなっている。ビラルが今月、母親に金銭的な支援を求めると、孫のために蓄えていた金貨2枚を現金にしてくれることになった。「家族はとても大切だ」とビラル。「わが家では、これを借金とは考えていない」。
給料を上回る高インフレ
トルコ経済の混乱は何年も続いているが、ここ3カ月で通貨リラの価値はドルに対し約半分に下落した。小麦粉や食用油などの基本食品から電気、ガスといった必需サービスに至るまで連日のように値上がりが続き、人々の生活は大きく揺らいでいる。給料や年金では基本的な生活費すらまかなえない状態に追い込まれているのだ。
3人の子を持つビラル(33)と妻のセヴィンチ(35)は、トルコの一般的な勤労世帯の生活がどれほど苦しくなっているかを説明したがっていた。ただ、政府からの弾圧を恐れ、フルネームを使うことは望まなかった。この国では、政府を批判すると投獄される危険がある。
トルコ経済の最近の落ち込みのきっかけとなったのは、大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアンが11月に発表した新たな経済計画だ。同大統領は経済を上向かせると約束したが、高インフレにもかかわらず政策金利を引き下げると表明し、過去20年間で最悪の通貨危機をトルコにもたらした。