インフレ加速で肉も油も買えない「トルコ」の窮状 急激なリラ安とインフレで生活困窮者が増加

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「支出が収入を大幅に上回っている」とセヴィンチは言う。「対策すら思いつかない。その日、1日のことを考えてやっていくしかないのかも」。

トルコは2000年ごろにも同様の不況に見舞われた。ただ、その後は、2003年に政権を握ったエルドアンの下で経済が約10年にわたって持続的に成長。多くのトルコ人が中流階級のライフスタイルを味わえるようになった。

ところが、エルドアンが権威主義を強め、政治的圧力から独立して政策金利を決定するはずの中央銀行に介入し、法の支配をないがしろにするようになったことから、経済運営に対する信頼は確実に失われてきたと経済の専門家は指摘する。

それでも、成長は新たな希望をもたらし、多くの国民が借金して住宅や自動車を購入するようになった。2000年代半ばに社会人になったビラルとセヴィンチもそうだ。

経済失政の行き着く先は……

ビラルは今、残業代を入れて月に最高4000リラ、約300ドル相当を稼いでいる。しかし、その半分は家とクルマのローンの支払いに消え、さらに多くがここ何カ月かで2倍になった電気代とガス代に消えていく。当然、クレジットカードの引き落としに回せるお金は残らない。

「子どもたちがつけっぱなしにした電気を消して回っている」とセヴィンチ。「子どもたちには水を使いすぎないようにと言い聞かせているし、料理に使う油の量も減らしている」。

ビラルは、物事は良くなると約束した政府を信じたいと話す一方で、この経済的な混乱のせいでトルコが不安定化することを恐れている。「こんな状況が続いたら、めちゃくちゃなことになるよ」とビラルは言った。

(執筆:Carlotta Gall記者)
(C)2021 The New York Times Company

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