高齢者の食事は「高カロリー」がいい意外な事情 基礎代謝は低くなってもエネルギーは消耗
お年寄りはわりと頻繁に熱を出すものですが、そういうときにこそよけいに食べてカロリーをつけていく必要があるということ。「食欲がないからおかゆでいい」なんて言っていてはダメ。熱に取られた分たくさん食べて、体力を取り戻すような方向へ考え方を変えなくてはなりません。
そもそも、高齢者はとくに病気を持っていなくても普段からたくさんカロリーを摂るよう心がける必要があります。それは、老化に伴い「体中のあらゆる箇所で、炎症が進んでいる」可能性が高いから。
さらに、病気の診断は下されていなくとも、高齢者の体はいたるところでさまざまな機能が「下り坂」となっています。そういった体の状態では、若い頃と同じように体を動かすにも、余計にエネルギーが必要となるのです。
さらに、もし何かの原因で入院してしまったら、非常に大きなストレスがかかり、一気に心身が消耗してしまうと考えられます。「入院10日で、7年分老化が進む」という研究報告もあり、一気に筋力が低下します。やせているお年寄りが入院すると、太っているお年寄りよりも「4倍も死亡率が高まる」というデータもあります。そういった「万が一のとき」に備え、普段からしっかり食べて「体重を蓄えておく」という考え方も必要でしょう。
私は高齢者の場合、若い人よりも多く食べるくらいでちょうどいいと考えています。これからは「年寄りの食事は少しでいい」なんていう古めかしい考えを180度くつがえし、「高齢者こそ若者以上に食べなきゃならない」という方向へ大方針転換していくべきなのです。
たんぱく質は「たっぷり」「回数を分けて」が効率を高めるコツ
また、高齢者はカロリーだけでなく、たんぱく質を摂るのにも「若者に負けずに食べる」というくらいの姿勢が必要です。それにしても、高齢者が筋肉を守り通していくには、いったいどれくらいのたんぱく質が必要なのでしょうか。それには、まず「筋たんぱく合成率」を考慮しなくてはなりません。
これはどれくらいのたんぱく質を摂ると筋肉合成が進むのかのパーセンテージのこと。高齢者の場合、筋肉を合成するには一度に多くのたんぱく質を摂らなくてはなりません。量で言うと、高齢者が筋肉を守っていくためには、体重が50キロなら1食当たり20グラム、1日当たり60グラムはたんぱく質が必要ということになります。
重要なのは、この「1食当たり」という部分。筋肉を守るためには、食事のたびに筋合成を刺激し続ける必要があり、「3食ともしっかりたんぱく質を摂る」ことが必要です。「朝と昼は軽めで、夜はしっかり」という人が多いかもしれませんが、朝を「食パンとコーヒー」だけで済ませていたり、昼を「コンビニのサラダとおにぎり」だけで済ませていたりしてはダメ。これでは、朝も昼もたんぱく質をほとんど摂取することができません。
たとえば、「朝は納豆とごはんとみそ汁」といった食事の場合、摂取できるたんぱく質は10グラム程度です。しかし、卵をひとつつけるだけでもプラス6グラムになりますし、豆腐をひときれつければ20グラムを超えます。
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