「経済安全保障への取り組みを行うにあたり、いちばんの課題は何ですか」(複数回答可)――この質問に対しては、75.0%が「米中関係の不透明性」、65.0%が「適切な情報の取得」、62.0%が「リスク評価」、57.0%「国際情勢に関する情報収集」と回答した。
今回のアンケートで最も顕著だったのは米中対立がいかに日本企業に重苦しくのしかかっているかという現実である。
「現在、米中対立の影響は、貴社の事業に何らかの形で出ていますか」という質問には、60.8%が「出ている」と答えた。「アメリカの規制強化(関税含む)によるコスト増」を挙げた企業が60.0%近くに上った。次いで「サプライヤーの変更」(36.5%)、「中国の規制強化(関税含む)によるコスト増」(33.8%)、「売上減」(29.7%)と続いた。「米中の板挟みになったことはあるか」という質問に対しては、12.5%が「ある」と答えている。
米中それぞれで事業展開するうえでの懸念
日本企業が米中それぞれで事業展開するうえでの懸念に関しても質した。中国の場合、「中国政府の方針変更による事業存続リスク」(76.1%)、「地政学リスク」(63.6%)、「技術情報を含めた情報漏洩」(65.9%)、「中国の競合企業の成長」(62.5%)、「中国政府の外資規制強化」(52.3%)、「サイバー攻撃」(52.3%)が挙げられた。一方、アメリカの場合、「中長期の対中政策の見通しづらさ」(45.5%)、「アメリカの中国企業排除の激化」(46.6%)、「サプライチェーンの混乱」(47.7%)、「地政学リスク」(38.6%)、「サプライチェーン再編や生産移管等によるコスト増」(28.4%)となった。
これに伴い、経済安全保障対策費用も増加し始めている。経済安全保障関連規制の強化による全体の費用増の程度に関しては、58.2%の企業が「5%未満の増加」と回答、「まったく増加していない」と回答した36.3%を大きく上回った。
ただ、「アメリカの規制強化(関税含む)によるコスト増」と回答したのは59.5%に上り、「中国の規制強化(関税含む)によるコスト増」と回答した33.8%を大幅に上回った。企業は現時点では、アメリカのほうが中国より「コスト増」要因とみなしている。
企業にとっては、米中市場はともに重要である。今後の中国の売り上げ比率目標に対する質問には33.3%の企業が、アメリカについても41.9%が「増やす目標がある」と回答している。
それだけに、企業は米中対立のはざまで苦悩している。新設の「経済安全保障大臣に対する期待」に関する質問では、「外交・安保面では、アメリカと強く連携すべきである一方、中国との間の経済関係の悪化はできるだけ避けるようバランスを取ってほしい」(ロジスティクス)、「米中二者択一を迫られるような局面を回避し、デカップリングのリスクを極小化するような政策運営」(運輸)「米中の板挟みにより日本企業が不利益を被らないような国家間調整」(電機)といった声が寄せられた。
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