実家の親「食べる量が減った」が危険サインの理由 食が細ってくると、生きる力も細っていく

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このように、たくさんの薬を服用することで不具合が生じることをポリファーマシー(多剤併用)と言います。日本の高齢者の多くは「薬漬け」の状態。病気ごとに違う病院に通い、複数の専門医からたくさんの薬を処方され、毎日とんでもない量の薬を飲んでいる人は決してめずらしくありません。そして、この高齢女性と同じように、薬の服用が健康上のトラブルに影響しているケースが非常に多いのです。

薬の副作用で「転倒」「骨折」する例も

なかでも多いのは「転倒」です。高齢者の転倒のじつに40%が薬に関係しているとも言われていて、「降圧剤服用後、血圧が下がりすぎ意識レベルが低下して転倒」「糖尿病薬服用後、低血糖になり意識が遠のいて転倒」「睡眠薬服用後、夜中にボーッと起きたときにフラついて転倒」といったケースが目立ちます。もし、転倒した際に骨折でもすれば、そのまま入院して衰弱の下り坂を一気に転げ落ちていくことにもなりかねません。

薬の服用が食欲の低下や低栄養につながっているケースもあります。高齢者によく処方される薬の中には、食欲を低下させたり消化吸収に悪影響を及ぼしたりするものが少なくありません。また、薬によっては腸の動きを悪くしたり、唾液の分泌を少なくして口内をパサパサにしたりする副作用があるものもあります。

そもそも、1回に大量の薬を飲んで、それだけでおなかいっぱいになってしまうという面もありますが、日本の高齢者が「たくさん食べられない」背景には、こういった薬の副作用が多分に影響している可能性があるのです。

つまり、「まじめに薬を飲む」→「副作用で食欲が落ちる」→「食べる量が少なくなる」→「低栄養になる」→「筋肉量が減ってやせてしまう」→「骨折や肺炎に陥りやすくなる」という悪循環にハマっていく高齢者が多いと考えられるわけです。

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