年間維持費24億円「新国立」の未来が不安すぎる訳 五輪後初の大規模イベント開催も運営は未知数

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「新国立がスポーツの拠点というのは旧国立と同じですが、周辺の敷地を公園として一般開放して広く使ってもらい、365日人が集まれるレガシーにするという新たな目標を掲げて建設されました。10月以降は散策やランニングなど日常的に地域の人々に活用していただけるようになりましたし、11月からは『フィールド展望』もスタートしました。

これは『新国立の中を見たい』という声に対応したもの。基本的に週末の9~16時に30分刻みで40人ずつ予約可能で、大人1000円で入館できます。そういった取り組み含め、人々に愛される施設にすべく、今後も努力を続けていきます」とスポーツ庁担当者も話していたが、ようやく新たな一歩を踏み出したと言っていい。

原状回復工事期間の休止時期に大規模イベントで使用される(写真:筆者撮影)

2022年3月末まではオリパラの原状回復工事期間で、当面はその休止時期に当たる年末年始だけ大規模イベントが入っている。

今回の天皇杯決勝を皮切りに、高校サッカー選手権の開会式・開幕戦・準決勝・決勝、ラグビー大学選手権の準決勝・決勝、ジャパンラグビー リーグワン開幕戦などが行われる予定。本格的な稼働は2022年4月以降になるという。

総工費約1600億円の巨額投資をどう回収?

しかしながら、新国立の運営についてはまだまだ未知数な部分が少なくない。総工費約1600億円、年間維持費24億円という巨額投資をいかに回収していくのかというのは、非常に難しい命題だ。政府は同競技場の運営権を民間に売却する「コンセッション方式」を採用。公募で運営事業者を決め、2022年後半以降、民営による使用開始を目指すということになっていた。

だが、現在の運営主体で、民間事業者のヒアリングの窓口である日本スポーツ振興センター(JSC)は「新型コロナの影響を受けて、東京大会が1年延期されたこと、民間事業者を取り巻く経済環境が大きく変化していることを踏まえ、スポーツ庁とも連携し、改めて民間事業者の感触や反応を確認しながら、実現性のあるスケジュールを見定めている最中です」という。つまり、2022年秋という目標時期は大幅に後倒しになりそうな雲行きだ。

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