落ち葉で「年間2億6000万円稼ぐ」徳島企業の実態 人口1500人弱の町で生まれた意外なビジネス

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徳島県上勝(かみかつ)町は、人口が1500人弱の小さなまちです。人口の半分が65歳以上であり、面積の86%が山林という、いわば山奥の田舎となります。見方によっては、限界集落のような特徴も含まれているかもしれません。

そんな上勝町なのですが、あるビジネスが順調なようです。わかりますか? 彼らが手掛けているのは、山で採れたモミジの葉っぱが大いに関係しているのです。

旅館や料亭などで食事をすると、料理の横に「つまもの」が添えられていることがあります。

たとえば、色鮮やかな季節の葉っぱがお皿のふちに添えられているのを、見たことがある方も多いのではないでしょうか。これのことです。

上勝町では、そのつまものを全国の料亭に出荷することで、年間2億6000万円もの売上を出しています。でもこの葉っぱ、実はそこらじゅうにあるもので、無料で手に入るものなのです!

発起人は、農協職員の横石知二さん(現:株式会社いろどり代表取締役)。横石さんは、料理に添えられていた葉っぱを持ち帰る女性客の姿を見て、「この葉っぱはビジネスになる!」とひらめいたのだそうです。しかも上勝町は土地の86%が山林であるため、葉っぱならいくらでもあります。その中から、料理のお皿に添えても見栄えがいいものを厳選して「彩(いろどり)」というブランド名も冠して、日本各地に出荷しているのです。

「年間売上1000万円」のおばあちゃんも

実はこの葉っぱビジネス、スタートしたのは1986年のこと。すでに35年続いている事業であり、現在では仕組みが確立されています。株式会社いろどりのホームページには、その仕組みが次のように説明されています。

「営農戦略・栽培管理は農家、受注・精算・流通は農協、市場分析・営業活動・システム運営は私たちが行う、三位一体のビジネスです。特徴は、商品が軽量できれいであり、女性や高齢者が取り組みやすいことです。多品種少量生産であり、種類は300以上、1年を通して出荷しています。現在上勝町内の農家は約150軒。年商は2億6000万円。中には、年間売上が1000万円を超えるおばあちゃんもいます」(※出典:「株式会社いろどり」のサイト)

さらに株式会社いろどりでは、パソコンやタブレット端末から「上勝情報ネットワーク」にアクセスし、受注情報、市場情報、今後の予測、栽培管理情報を駆使するなど、まさに情報通信技術活用によるビジネスの成長も実現しています。

このビジネスのおかげでまちには活気が生まれ、まちづくりのモデルとしてメディアにも取り上げられています。2012年には映画『人生、いろどり』にもなりました。そこから波及するように、農業体験希望者や移住希望者も増えているそうです。

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