古代ローマに学ぶ効率的な「税システム」のあり方 「脱税」で崩壊したローマ帝国の歴史を紐解く
古代ローマにも優れた税システムがあった
「古代ローマ」は地中海周辺から西ヨーロッパやアジア、アラブにまで勢力を伸ばした、いわずと知れた古代世界での超巨大国家です。
古代ローマが、現在のヨーロッパの礎をつくったのであり、古代ローマのつくった都市の多くはそのまま現在のヨーロッパの中枢都市になっています。
この古代ローマも、非常に効率的な税システムを持っていました。
古代ローマの共和政時代(紀元前509年から紀元前27年ごろ)には、ローマ市民はほとんど直接税を払っておらず、ローマの行政官は、無報酬でローマ市民が務めていました。
そして最低限の行政経費は、輸出入における関税や奴隷税で賄っていました。
奴隷は売買するときに2%から5%の売却税がかかり、奴隷が自由になるときには奴隷の価格の5%の税金が課せられていました。この奴隷税により、だいたいの行政経費は賄えていたのです。強いていえば、古代ローマには兵役の義務がありました。ローマ市民は、無報酬で1年間従軍する決まりになっており、武器なども自前で調達することになっていたのです。ローマの軍隊は、この徴兵制によって維持されていたのです。が、この兵役の義務もやがてなくなりました。
その代わりに「戦争税」が課せられるようになりました。
持っている財産の種類によって税率が変わる仕組みになっており、宝石や高価な衣装、豪華な馬車などの贅沢品には、最高10倍の税金が課せられたのです。また金持ちには、戦争時には、国家に融資する義務がありました。
これはあくまで「融資」だったので、ローマ軍が戦争に勝って、戦利品などがあれば、融資した額に応じて「配当」があったのです。
しかもローマ軍が勝ち進み、領地が拡大するとともに、この戦争税も廃止されました。都市国家ローマ(共和政ローマ)が誕生して350年ほどたった紀元前150年ごろまでに戦争税はすべて廃止されたとみられています。
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