古代ローマに学ぶ効率的な「税システム」のあり方 「脱税」で崩壊したローマ帝国の歴史を紐解く

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またディオクレティアヌスの後を継いだコンスタンティヌスは、キリスト教を容認し国教とすることで、財政安定を図ろうとしました。

キリストの死後、弟子たちは「教会」をつくり、それが教団として急激に拡大していきました。

当初、ローマ帝国はキリスト教を禁止していましたが、キリスト教が広がることを抑えられない様子を見て、4世紀のローマ帝国皇帝コンスタンティヌスが、逆にローマ帝国の統治に取り込もうとしたのです。

当時、キリスト教はいくつもの宗派に分かれていましたが、コンスタンティヌスは、キリスト教のアタナシオス派に国教としてのお墨付きを与えることで、キリスト教の間接的な支配者になったのです。

キリスト教懐柔策の目的は「徴税」だった

コンスタンティヌスのこのキリスト教懐柔策の大きな目的の1つが「徴税」でした。国家とキリスト教を結び付けることにより、「キリスト教徒であれば国家にちゃんと税金を払え」というふうに仕向けたのです。キリスト教徒としても、「信仰と税金」がリンクすることになり、税金を払わざるを得なくなったわけです。

ディオクレティアヌスやコンスタンティヌスの税制改革は、一旦は成功し、ローマ帝国はかつての隆盛を取り戻しました。

しかし、この税制改革も長続きはしませんでした。

というのも、税収不足はなかなか解消されなかったので、徴税が過酷を極めたのです。

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ディオクレティアヌスの徴税システムを遂行するには、巨大な官僚組織が必要でした。この官僚組織を維持するには、多額の税収が必要となります。

官僚組織は、巨大化すればするほど、腐敗する可能性も高くなります。

富裕な貴族や大地主たちは、賄賂を使って税の免除を受けたり、安く済ませることができました。賄賂を出せないローマ市民や農民たちは、貴族や大地主に自分の土地や資産を寄進し、その配下になっていきました。そのため、貴族や大地主の勢力が肥大化し、国家の形態が破綻していきます。

「税を免除された特権階級が肥大化する」という、国家が崩壊する非常にオーソドックスなパターンです。

ディオクレティアヌス、コンスタンティヌスの時代から約100年後、古代ローマは東西に分裂し、やがて衰退していくことになりました。

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