コロナ禍に最高益「無印」人気商品が次々出せる訳 ヒットは「つくる」ではなく「探す、見つけ出す」

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ところが、一時期「見出す力」が衰えてしまった時期がありました。世界中からいいものを見つけてくる活動は、時間もコストもかかります。そこで、商社の人たちにお願いして商品を探し出してもらう方法に切り替えました。商社にはさまざまな調達部門があり、大量の情報やネットワークを持っています。そこを頼みにしました。

しかし、商社の人の中には無印良品の哲学をきちんと理解してくれている人たちと、そうではない人たちがいました。その結果、玉石混淆になり、そこから選別しているうちに、今まで使っていなかったような色やデザインが紛れ込んでしまい、無印良品らしさが失われていきました。

商社は無印良品だけではなく、他社にも製品を提供しています。そのため、“どこにでもあるような素材を使った商品”が無印良品にも散見されるようになったのです。

自分たちで歩いて探してくるのではなく、一般的な商社というルートで、誰でも仕入れられるものを集めたため、無印良品のコンセプトに沿ってアレンジしたとしても、従来の商品とは違うものになってしまうのは当たり前です。これでは、“売れる商品”を目指すメーカーがつくるものとの違いがありません。

その結果、無印良品のお客様は敏感なので、「最近の無印は薄っぺらくなった」と離れていってしまいました。これは、2001年に無印良品が赤字に転落した原因の一つです。

無印良品らしさを取り戻すために行ったこと

私は社長になったとき、無印良品が赤字に転落してしまったのは「ブランド磨きを怠ったからだろう」と分析しました。どうにかして、無印良品らしさを取り戻さなければならない。そのような思いから2003年に生まれたのが、「ファウンド・ムジ」と「ワールド・ムジ」です。

ファウンド・ムジは「世界の生活文化や歴史に根付いた良品を探し出し、世界の優れた日用品から学び、無印良品のフィルターを通して商品化する」というコンセプトでつくられた商品カテゴリーです。「つくる」ではなく「探す」ことをメインにしています。

これは元々、無印良品がずっとやってきたことではありますが、それをさらに先鋭化し、時代の先を行くようにしなければなりません。そうしなければ世の中のニーズから遅れてしまうし、たとえ海外に持って行っても競争力のない商品になってしまうだろう、と考えました。

そうして、世界のあらゆる所に深く入り込みながら、昔から使われてきたものを社員が探し歩くようになったのです。

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