自動運転バス内で問診、スマート医療の現在地 病院と連携、実証実験中のヘルスケアMaaSとは

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自動運転バス・アルマの座席(筆者撮影)

座席は、座面がやや薄く、患者などの中には座り心地を気にする人もいるかもしれないが、筆者自身はさほど気にならなかった。速度がかなりゆっくりということもあり、路面からの突き上げ感もない。実験会場は、エリアによって制限速度が決められており、あらかじめ車両にそのデータが入っているため、速度調整も自動で行う。

また、走行ルートも事前に作成された3Dマップに設定されているため、右左折も自動だし、ウインカーの操作さえ不要だ。オペレーターは、あくまで不測の事態などが発生した場合に、車両を安全な場所に停止するなどの制御を行うために乗車しているだけで、運転は基本しない。なお、非常時の車両操作は、前述のとおり、車両にハンドルやペダル類がないため、オペレーターがゲーム用コントローラー(X box用)を使って行う。まるでドライブゲームのように車両を動かす点も、一般的なクルマのイメージと違っていて面白い。

スマートフォンアプリを使ったデジタル問診の画面(写真:プレシジョン)

運行中は、乗車前にタブレットで測定したバイタルサインの数値をスマートフォンの問診アプリに入力し、デジタル問診を行うデモも体験した。アプリは協力企業のプレシジョンが開発した。入力データは、サーバーを介して病院に転送されるため、診療時間の短縮に貢献する。こうしたデジタル問診は、将来的には、座席前などにタブレットなどを設置し、乗員の顔を自動認識しバイタルサインを測定、そのまま病院へ転送することも検討されている。そうなれば、患者などの乗員は作業が不要になる。スマートフォンやタブレットが不得手な高齢者などは、操作に手間取り無駄に時間がかかるケースも想定できるため、そうした方式の方が現実的だろう。

試乗は約10分で終了。停車時のブレーキも自動だが、10km/h前後の速度からの制動だったこともあり、車体はゆるやかに停まり、とくに体が前のめりになることもなかった。これなら、体が不自由な人や足腰が弱い高齢者が乗車しても、走行中に不安に感じる場面はないだろう。

自動運転バスを活用したヘルスケアMaaSの実現性

今回の実証実験は、将来的に湘南アイパーク近隣に2032年頃の開業が予定されているJR東海道線の新駅「村岡新駅(仮称)」からの運行を検討している。前述の村岡・深沢地区ヘルスイノベーション最先端拠点の形成計画に関する5者(湘南アイパーク、湘南鎌倉総合病院、神奈川県、藤沢市、鎌倉市)連携も、当駅の計画に合わせて行われたものだ。

実施者側の青写真は、自宅から駅までは電車などで移動し、あらかじめ自宅または駅で予約した自動運転バスに駅で乗り込み、病院へ移動するというもの。バスのゲートでは、体温測定を行い、発熱者がいれば専用の自動運転バスを使った別ルートで移動してもらい、病院にも専用口から入ることを想定し、コロナなど感染症にも対応する。

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