自動運転バス内で問診、スマート医療の現在地 病院と連携、実証実験中のヘルスケアMaaSとは

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アルマの車内の様子(筆者撮影)

発熱などの問題がない患者に関しては、そのまま予約した自動運転バスで移動し、デジタル問診を車内で行い、病院での待ち時間などを短縮する。到着後、歩行が困難な患者などへは、自動運転の車いすを提供し、広い院内の移動サポートも視野にいれている。また、さまざまな情報連携により、受付レスで診察室へ行くことが可能になり、診療後も会計レスで支払いを済まし、薬局などを経由後に、同じく事前予約した自動運転バスで帰路につくといった感じだ。加えて、先々は、患者の自宅に自動運転バスが直接出向いて病院へ移動することや、帰路に買い物に立ち寄るなど、個々の利用者ごとに最適なサービスを実施することも検討されている。

自動運転に関わる課題をクリアできるのか

将来的に自動運転バスを公道で運行させる場合、先ほど述べたような青写真が可能かどうかはまだ不透明だ。今回の実証実験は、湘南アイパーク施設内の限定区域内で行われため、ほかの車両や歩行者、自転車などはほぼいない。だが、それらとの混合交通となる一般公道では、安全性が確保できるかどうかがカギになる。その点は、先述した茨城県境町などの事例があるため、ある程度は仕組みなどを流用することは可能だろう。

ただし、例えば、交通渋滞で自動運転バスの運行時間が遅れることも想定でき、診療時間に間に合わないなどのケースが出てくることも考えられる。また、実験に使われている自動運転バスのアルマは、最高速度が25km/hまでのポテンシャルしかない。交通状況やルートによっては、バス自体が渋滞の原因になることもありうる。そう考えると、実際の実用化にはまだまだ課題が山積みだといえる。

アルマの外観(筆者撮影)

運行に関しては、マネタイズの問題もある。自動運転バスやICT関連の運用費などをどこが負担するかも重要だ。今回のプロジェクトには、湘南鎌倉総合病院も参画しているため、ある程度は病院側で負担することも考えられるが、それが診療費増などにつながると、結果的に患者側の負担増となってしまう。ほかにも、もし運転者がいない完全自動運転化をするのであれば、道路交通法や道路運送車両法などの改正も必要となってくるため、国との連携や協力も必要だ。

自動運転バスは、少子高齢化などに起因する運転者不足といった課題解決に向けた方策のひとつでもある。それにMaaSを組み合わせることで、医療関係でも患者などの利便性が向上することは間違いない。実施に向けた道はまだまだ険しそうだが、今後の動向に注視したい。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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