「リクナビ悪者論」に物申す

就活を激変させる「2016年問題」とは何か

さて、さりげなく宣伝をさせていただいたところで、本論に移りましょう。連載第1回目のタイトルは「『リクナビ悪者論』に物申す」ですが、「リクナビ悪者論」を取り上げるのには、もちろん理由があります。実は今回の就活後ろ倒しによって、リクナビをはじめとした就職サイトが作った「よい面」が失われ、リクナビ登場以前の「悪い状態」が復活してしまう可能性が非常に高いのです。そのため、何が失われてしまうかをよく知っていただくためにも、やや遠回りに見えますが、リクナビの功罪について、考えてみたいと思います。

「リクナビ」以前、採用は極めてクローズドだった

現在、就職活動にはさまざまな批判が寄せられています。その中で目立つのが、日本の就職活動が「リクナビ」のせいで悪くなったという論調です。

たとえばドワンゴの川上量生会長は、WEDGEのインタビューで「『リクナビ』はひどいと思います。学生をたくさんの会社にエントリーさせようと煽っている。会員登録すると人気ランキング上位の会社に全部エントリーしてみましょう、と勧められる。『まとめてエントリー』ボタンを押すと上位50社とかにいきなりエントリーされる」と語っています。

川上会長が語るように、確かに就職支援サイトは、多数の学生がいろいろな企業にたくさんエントリーすることで、一種の非効率を生み出しています。多くの人気企業の合格率は1%を切ります。裏を返せば、世に言われているように「100社受けて1社受かるかどうか」という状況になってしまっているのです。この状況が学生を精神的に追い詰めていることは、否定のしようがありません。

しかし、では就職支援サイトには悪い面しかないのかというと、そんなことはありません。就職支援サイトができる以前、就活はどのように行われていたかを考えれば、リクナビの功績は計り知れません。

その昔、日本がバブルに踊っていた1980年代後半から1990年代前半には、大きな声では誰も言いませんでしたが、特に大手企業では、ほぼすべての採用が水面下で決定されていました。

当時は、大学4年生の10月1日が採用選考の解禁日でした。テレビのニュースで、どこかの人気企業の説明会に大勢の学生が列をなしている光景が流れるのが解禁日のお約束だったのですが、実はあれはまったくの茶番劇。実際には、解禁日までにはすでに90%以上(会社によっては99%のところもありました)の内定が水面下で決まっていて、残りの枠はほんの数人にすぎませんでした。一応、形どおりの説明会をやって、たまたまいい候補者が見つかればその枠を埋めるという、「本音と建前の使い分け」が横行していたのです。

水面下の採用活動を担ったリクルーター

こういった水面下の採用活動を進めた原動力が、「リクルーター」でした。当時の採用活動は、事実上、リクルーターが集めてきた採用候補者の中からのみ選考するという、きわめてクローズドな方法がとられていたのです。

そのため、リクルーターから声をかけてもらえない学生は、意中の会社に資料請求のハガキを送ることしかできず、あとは各社のおメガネにかなって連絡が来るのをひたすら待つしかありませんでした。

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