さて、ここまで2つの誤解について解説してきたが、とりわけ投資家たちには「より重要な中央銀行の金融政策に関する誤解」がある。
こちらの誤解は、確信犯的な誤解だと疑われるが、それは、中央銀行は、株式市場のことはいっさい考慮に入れず、金融政策を決定する、ということである。
すでに述べたように、セントラルバンカーたちにとって、金融政策とは「経済のため、実体経済のため」なのである。パウエル議長も今回の記者会見でも繰り返し同じ言葉を使い続けたが、インフレーションと雇用、これがFEDの使命なのである。株式市場はどこにもない。
本当は為替市場についても、どこにも考慮に入れていない。実際、黒田東彦日銀総裁も為替レートには言及しないし「為替レートに働きかけることはない」「適切な金融政策をして、それが適切に為替市場に反映されるだけだ」と繰り返し説明している(アメリカは基軸国通貨所有国家だから、FEDはほとんど為替レートに関心を持たないし、記者も誰も質問しないが)。
この確信犯的な誤解、「グリーンスパン・プット」や「バーナンキ・プット」という言葉に代表されるように、「中央銀行総裁が株式市場を支えてくれる」という風説の流布がこのような誤解を一般にも定着させ、一般人あるいは報道関係者も、これが確信犯的な誤解であることに気づいていない、という大問題が生じている(もっとも、グリーンスパン元FRB議長はこの風説の流布を逆に利用していた。そもそも彼が力を持ったのは、株式市場をブラックマンデーから救ったからで、彼は、セントラルバンカー史上、日銀の歴代総裁とは比べ物にならないぐらい罪深いセントラルバンカーだ)。
FOMC後の株価上昇を喜んでいいのか?
さて、今回のFOMC後、アメリカ株式市場は大幅に上昇した。これはいったい何を意味しているのか。報道では、「株式市場は懸案だったFOMCを無事通過したため安心感が出て、買いが集まっている」という解釈が流されている。「市場はリスクオンに傾いた」ということらしい。これを受けて、日本株も大幅に上昇。日経平均株価は606円も上昇した。そうとうなインパクトだ。アメリカや日本だけでなく、世界中の株価が上昇した。しかし、そもそも今回のFOMCの内容は、そんなに株式市場にとっていいものだったのだろうか。
実際は、正反対である。日本のエコノミストやFEDウォッチャーたちも「今回のFOMCの結果発表は考えうる中でもっともタカ派の内容だった」とテレビなどで解説していた。
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