高学歴の親が「叱って伸ばす」で子どもを潰す必然 経験も自信もない「普通の子」に必要なこと

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偏差値60以上の子は、統計的には母集団の約16%しかいません。10人に1~2人しかいない計算です。偏差値70となると約2%ですから100人に2~3人です。どれくらいの偏差値が取れれば「自分はできる。上級者だ」と思えるのかは主観の問題ですが、少数派であることはおわかりいただけるでしょう。あなたなら、お子さんが偏差値いくつを取っていたら、「わが子はできる。上級者だ」と思いますか?

小4~5のうちは、まだ成績アップや受験の合格にそこまでコミットしていない子たちばかりです。志望校も明確に決まっていない場合が多いですし、志望校があったとしても「何がなんでも」というまでの思いはなかったりします。

そんな、「高いコミットメント」も「自信」もない、普通の子たちには、ネガティブなフィードバックよりポジティブなフィードバックのほうが効果的である場合が多いです。

自分の受験経験を話す際は注意を

「高学歴な親」は、自分は勉強ができ、勉強にコミットしていたという方が多いでしょう。そういう方たちが、「自分なら改善点を、忌憚なくビシッと指摘してくれるネガティブなフィードバックのほうがうれしい」という感覚で子どもに接すると、危険です。「自分なら」という感覚は捨てて、「この子はどうなのだろうか」と考えて、接し方を決めましょう。

以上、「高学歴な親」が陥りがちな落とし穴についてでした。結局のところ「自分だったら、これでやる気が出る」を子どもに押しつけると失敗しがちということです。

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特に、自分の受験経験を基に話す場合には注意が必要です。私が経営している塾に在籍する若い大学生の学生講師たちですら、「自分が小学生のときの受験の記憶はあいまいだ」と言っています。となれば、普通の親御さんが「小学生のころの自分がどうだったか」を覚えていることなど、まずないはずです。

となると、自分の受験経験を基に話をするときには、自分にとって一番最近の受験であり、記憶に残っている「大学受験」の経験で話をすることになるでしょう。「高校生の自分」と「小学生の子ども」の間には、能力にも経験値にも大きな隔たりがあります。そのまま当てはめることには無理があります。

お子さんの目線に立って、お子さんの視点で、やる気になる声かけを考えてあげてください。そうすれば、お子さんの能力を引き出し、成績アップや受験の合格に導いてあげられますよ。

(※)Tell Me What I Did Wrong: Experts Seek and Respond to Negative Feedback
菊池 洋匡 中学受験「伸学会」代表、算数オリンピック銀メダリスト

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きくち ひろただ / Hirotada Kikuchi

開成中学校・高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。10年間の塾講師歴を経て、2014年に中学受験専門塾「伸学会」を自由が丘に開校し、現在は目黒・中野を合わせて3教室に加え、オンライン指導も展開。最新の教育心理学の裏付けがある授業は、特に理系の父母からの支持が厚い。指導理念と指導法はメルマガ(登録者約8000人)とYouTube(登録者約46000人)でも配信。生徒の9割以上は口コミによる友人紹介と、メルマガやYouTubeを見ているファンの中から集まっている。著書に『小学生の勉強は習慣が9割』(SBクリエイティブ)などがある。

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