高学歴の親が「叱って伸ばす」で子どもを潰す必然 経験も自信もない「普通の子」に必要なこと

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また、結果ではなくプロセスに対して行ったフィードバックについての実験も紹介されています。その実験では、半分の参加者にはタスクの途中で「まだ8割も残っていますね」とネガティブなフィードバックを行いました。残りの半分の参加者には「もう2割も終わったんですね」とポジティブなフィードバックを行いました。

その結果わかったのは、目標へのコミットメントが低い人は、ポジティブなフィードバックでやる気を出し、ネガティブなフィードバックではやる気が下がる傾向があることでした。逆に、目標へのコミットメントが高い人は、ネガティブなフィードバックでやる気が出る傾向があったそうです。まとめると、

→自分は上級者だと思っている自信のある子、成績アップや受験合格といった目標に対して高いコミットメントがある子は、厳しく叱ることで伸びやすい。

→自分を初心者だと思っていて自信のない子、成績アップや受験合格といった目標に対して、それほどコミットしていない子は、厳しく叱るとツブれてしまう。

という傾向があることがわかります。これは、あらためて言われてみれば、納得できる内容なのではないでしょうか?

スポーツの世界では、しばしばパワハラが問題になりますが、「あの厳しい指導で鍛えられたから今の自分がある」と、後々まで感謝している人も少なくありません。「そのスポーツでうまくなりたい」「試合に勝ちたい」といった高いコミットメントがあるからこそ、厳しい指導でより伸びたということですね。まして、スカウトされてスポーツ推薦で集められたエリート集団などは、自分が上級者であるというプライドもあるでしょうから、厳しい指導のほうが伸びやすい下地がありそうです。

「自分の経験」から叱ってしまうと大失敗する

私の指導上の経験とも一致します。大手塾で選抜クラスを担当していたときには、ビシビシ叱って伸ばすスパルタ式の授業で生徒の成績を伸ばして合格させていました。きっと同じように、厳しい指導で勉強させ難関進学校の合格実績を出している塾は多いでしょう。

しかし、これが通用するのはごく一部の子たちです。多くの子は、勉強に対してそれほど自信がない初心者です。なにしろ人生経験がそれほどなく、成功体験も少ないわけですから。

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