「不安になりにくい人」がやっている日々の習慣 「いつでも仮面を外せる」ようにしているか
羽賀:「人間が持つ闇」をテーマにした作品は数多くありますけれど、作家にとってはその深い闇をのぞいて向き合い続ける作業でもあるので、精神的にかなりきついと思います。
佐渡島:それで自殺してしまう作家もいるくらいだからね……。ただこれは、作家という職業だけが特殊な要因ではない気がする。なぜかというと、自殺してしまう人の職業において作家が突出して多いわけではないから。僕はやはり、外的要因が存在していると思うな。たとえば人やコミュニティとの接点がほとんどなかったり、逆に人やコミュニティがストレスになっていたり。
あとは昼夜逆転の生活や、薄暗い部屋でずっと何かに没頭しているとか……。もちろん要因はこれだけではないけれど、少なくとも生活スタイルがめちゃくちゃな人は、負の思考や負の感情にのみ込まれやすくなってしまうと思う。
すべての感情は人間という「生身の箱」に湧き上がるものだから、まずはこの箱をすごく丁寧に整えることを最優先するのが重要ではないかと。
羽賀:佐渡島さんは朝ヨガやサウナ、ウォーキングを自身の生活スタイルに取り入れているし、まさに「箱を整える」ことを大切にしていますよね。
佐渡島:うん、かなり意識してやっている。今思い出したのが『レディバード・レディバード』というイギリスの映画。とある事故によって「母親失格」の烙印を押された女性が、自分の子どもを次々と社会福祉局に奪われるというストーリーで、実話を元にしているんだよ。母親がひたすら子を想う気持ちと、法による無慈悲さが強烈で、演じる俳優が情緒不安定になるかもしれないとカウンセラーを入れて撮影したらしい。
イギリス・アメリカの役者のトレーニングの違い
石川:イギリスでは、役者はまず「仮面の外し方」からトレーニングするのだと聞いたことがある。アメリカはその逆で、いかにして「仮面を付ける」かをトレーニングする。捉え方の違いが面白いよね。アメリカの役者は仮面を付けるのがうまい。イギリスの役者は外すのがうまい。つまりイギリスは、「“仮面を付けていない自分とは何か”をしっかり持っていないと、役柄や感情に自分を持っていかれるぞ」ということ。