私たちが日々「罪悪感」にさいなまれてしまう理由 「社会のルール」「マイルール」の罠

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石川:アップグレードする人は、ルールを破ったり壊したりして新しくしていくわけだから、罪悪感を抱いているかもしれないね。本人はそう思っていなくても、そこについていく人たちとか。

佐渡島:正義感の場合もあるよ。むしろ今までのルールのほうが罪で、「壊すべき」だと考えている人たちだったらね。古い産業をつぶすのって、今までの人たちに「無価値」と言っているような罪悪感があって、でも同時に「社会を更新するんだ」という正義感も味わえる。

「罪悪感/背徳感/正義感」の関係

羽賀:ふと思ったんですけど、「罪悪感」と「背徳感」って違う感情なんですかね?

佐渡島:背徳感は、社会のモラルに反していることじゃない? そしてそれを心のどこかで喜んでいる。不倫とか。

石川:「背徳感」って字がいいよね。「徳」に対して背を向けている感じ(笑)。道徳に反していますよ、これは。

佐渡島:あとは、ルールをちょっと破っているというよりは、過剰に破っている状態かな。

ダイエットしているときに、少しのカロリーオーバーだと罪悪感だけれど、すっごいオーバーしたらもう背徳感。カロリーゼロ飲料は罪悪感を消してくれるし、逆に揚げ物なんかは背徳感を抱きそう。

とすると、「罪悪感/背徳感/正義感」は近い感情なの? 同じ事象に対して、3つの感情を抱く可能性があるということだよ。すごくない?

『感情は、すぐに脳をジャックする』(学研プラス)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

石川:倫理の三角構造だ! 「ジレンマ」はAかBのどちらかだけど、この場合は3つだから「トリレンマ」。なので「倫理のトリレンマ」と呼ぶことにしよう。

佐渡島:ちょっとした発見だね。僕は、ルールの真意を見直すようになってから、罪悪感を抱かなくなったなあ。

羽賀君、今回の考察で少なくとも締め切りに対しては、罪悪感を抱かなくなっているかもよ?

羽賀:「俺はマンガを作っているんだ! いいものを世に送り出すという正義感でやっているんだ!」と(笑)。

石川:編集者にも、「締め切りなんて遅れて当たり前だろう。誰と仕事していると思っているんだ?」と!

佐渡島:そうそう。「ほかのマンガ家は必死に締め切りを守ろうとしているのに、俺は堂々と締め切りを破る!」という背徳感も一緒にさ。いいねえ、背徳感を味わいながら締め切り破るの(笑)。

佐渡島 庸平 コルク代表取締役社長CEO/ 編集者

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さどしま ようへい / Youhei Sadoshima

1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社し、『週刊モーニング』編集部に所属。三田紀房『ドラゴン桜』を担当。小山宙哉『宇宙兄弟』のTVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎、平野啓一郎など小説も担当。2012年、講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社・株式会社コルクを創業。インターネット時代のエンターテインメントのあり方を模索し続けている。

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石川 善樹 予防医学研究者

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いしかわ よしき / Yoshiki Ishikawa

1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。(株)Campus for H共同創業者。「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。

Twitter:@ishikun3

個人HP:yoshikiishikawa.com

 

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羽賀 翔一 漫画家

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はが しょういち / Shoichi Haga

コルクスタジオ所属。1986年生まれ。2010年、『インチキ君』で第27回MANGA OPEN奨励賞を受賞。『ケシゴムライフ』でデビュー。『漫画 君たちはどう生きるか』で一躍注目を浴びる。

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