早慶W合格で「早稲田が大躍進」慶應との差は何か 勝敗のポイントは大学の「改革」の姿勢にあった

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市村さんは言う。

「ダブル合格データはあくまで一部の受験生の結果ですが、早稲田の好調ぶりは明らかで、その動きは今年だけにとどまらないと思います。早稲田は近年、積極的に改革を進めてきました。その成果がようやくでてきた。これまでの慶應圧勝の状況に早稲田が待ったをかけ、早慶対決が新たなフェーズに入ってきたのではないでしょうか」

司法試験で慶應が逆転

大学通信の安田賢治常務取締役は、こう振り返る。

「昭和は早稲田、平成は慶應の時代でした」

昭和のころ、早稲田は学部によっては東大の偏差値と同等だった。「第1志望が早稲田、第2志望が東大」という受験生もいた。それが、平成になると慶應に流れが変わった。何があったのか。

慶應は1990年、湘南藤沢キャンパス(SFC)を開設し、幅広く学べる学際系の学部を設置した。国内で初めてAO入試(現・総合型)も導入した。

また、2004年の法科大学院の開設以降は、司法試験の合格者数で早稲田を逆転した。慶應が国内大学で最多の合格者数を誇る年もある。

東進のダブル合格のデータを見ると、今年、慶應に進んだ比率が圧倒的に高かったのは法学部だ。早慶の両法学部に合格した場合、84.0%が慶應を選ぶ。安田さんはこう説明する。

「昭和のころは『慶應で最も入りやすい』なんて言われましたが、今は違います。司法試験の合格者が増えたことも手伝って、看板の経済学部と並ぶ偏差値になりました。内部進学者や一般選抜以外の合格者が多くて、一般入試の枠が少ないこともあります」

一方、河合塾・教育研究開発本部主席研究員の近藤治さんはこう指摘する。

表:AERA 2021年12月13日号より

「そうした改革の積み重ねで、慶應のブランドイメージが向上しました。かつては慶應のほうが改革に熱心に取り組んでいたんです。ただ、最近はあまり聞こえてこない印象です」

この法学部でも早稲田に流れは変わり、受験生全体に波及するのだろうか。

今、早慶とも改革は欠かせない。少子化で学生数が減少し、大学経営が厳しくなることが予想されているからだ。近藤さんはこう話す。

「全国の優秀な学生を獲得して大学のレベルを保ちたいという思惑があるでしょう」

早稲田は全国各地の学生が集まり、慶應は首都圏からが多いイメージがあるかもしれない。だが、実は早慶の地方出身者の比率はそれほど変わらない。合格者の高校所在地のデータを見ると、2000年の慶應合格者のうち関東出身者は63.4%で、2001年の早稲田の62.0%と拮抗している。2021年も慶應が78.2%、早稲田は79.93%と両校とも同じように「関東ローカル化」が進んでいる。全国の優れた学生をどう引きつけるのか、早慶の次の手が見逃せない。

(編集部・井上有紀子)

※AERA 2021年12月13日号

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