「消費税引き下げ」を政府がまるで議論しない理由 下手を打つと「財政悪化を加速させる」だけ

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ちなみにマレーシアでは、ムーディーズが政府保証の付いたペトロナスの社債の格付けをA1(安定的)からA1(ネガティブ)に引き下げています。

第3は、内閣支持率の上昇です。マレーシアでは、マハティール首相が「消費税ゼロ」を公約に掲げて政権に復帰しました。日本でも先の衆院選で、れいわ新選組が躍進しました。岸田首相が「消費税ゼロ」を決断すれば、大半の国民が熱狂的に支持するでしょう。

消費税ゼロで消費は増えるのか

さて、「消費税ゼロ」の影響で最大かつ最も不透明なポイントは、「消費が増え、経済が活性化するのか」です。消費税の税収が減っても、消費が拡大し、経済が活性化し、所得税・法人税の税収が増えればいいわけですが、これはなかなか微妙です。

マレーシアでは、2018年の「消費税ゼロ」によって、税制変更の影響を受けやすい自動車の新車販売台数は、前年(2017年)同月比で以下の通り推移しました。

1月:△0.2%
2月:△4.4%
3月:△6.9%
4月:10.2%
5月:△15.0%
6月:28.3%
7月:41.2%
8月:26.8%
9月:△23.7%
10月:0.5%
11月:△1.8%
12月:△11.9%

「消費税ゼロ」になった6月から8月は販売台数が大幅に伸びましたが、その前の5月には買い控え、SSTが導入された9月には反動減が起こっています。日本で消費税増税のたびに駆け込み需要があったのと同じように、マレーシアでも「消費税ゼロ」は駆け込み需要を誘発したにすぎなかったです。

このように、一時的な税率の引き下げ(や課税の凍結)では、消費を喚起することはできません。一時的な税率の引き下げではなく、恒久的な政策として「消費税ゼロ」にする必要があります。

では、仮に日本政府が「消費税ゼロ」を実施し、「永久に消費税を復活させない」と公約したら、国民は消費を増やすでしょうか。

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