「ランクル300」ボディを拡大しなかった深いワケ サイズと形状に見る本格オフローダーの最適解

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インパネは車両姿勢を把握しやすい水平基調で、豊富な快適装備を盛り込んだ幅広いセンターコンソールを組み合わせる。このあたりは先代200系譲りだ。

上面が水平のデザインを採用するインストルメントパネル(写真:トヨタ自動車)

メーターパネルは中央にマルチインフォメーションディスプレイを備えつつ、速度計とエンジン回転計はアナログ式として残している。

センターパネルは12.3インチの大きなタッチディスプレイが目立つが、多くのスイッチをタッチ式とせず、扱いやすい形状としたうえで、機能ごとに分けてレイアウトしたことに感心した。

過酷な悪路を走行中でも確実に操作できることを狙ったのだろうが、実際に乗ってみると、形状だけでなく配置も考え抜かれていることがわかる。たしかにスイッチの数は多いが、一度覚えてしまえば扱いやすい。

水平・垂直に大きなスイッチを並べ、操作性を考慮(写真:トヨタ自動車)

そもそもタッチパネルはオフロードでは手が揺れてしまって使い物にならないし、音声入力も正確な発声が難しいことを経験上知っている。極限を知るSUVらしい思想に納得した。

もう1つ運転中に気づいたのは、フロントウインドー越しに見えるエンジンフードだ。中央の窪みを大きく、左右は前方に行くにしたがい絞り込まれている。

中央の窪みは衝突安全性能を高めるとともに、前方視界を良好にするという機能的な要素も持っているそうだが、絞り込みはかつての40系や50系を思い出させるもので、ヘリテージ性への配慮に好感を抱いた。

1960~1984年に生産された40系(写真:トヨタ自動車)

ラグジュアリーか? オフローダーか?

3.5リッターV6ガソリンターボのZX(7人乗り)と3.3リッターV6ディーゼルターボのGRスポーツ(5人乗り)の2台の走りにも少し触れておこう。

ガソリンエンジンは、V8自然吸気を積んでいた200系以上の静かさと滑らかさ、ディーゼルは心地よいサウンドと余裕のトルクを生かした力強さが印象に残った。

乗り心地とハンドリングは、ガソリンエンジンを積んだZXのほうが60kg軽いことに加え、GRスポーツのサスペンションはオフロードを想定したチューニングで、タイヤがガソリンのZXはオンロード重視の265/55R20、ディーゼルのGRスポーツはオフロードも考慮した265/65R18だったことを頭に入れる必要がある。
「GRスポーツ」にはオフロード走破の高いタイヤを装備(写真:トヨタ自動車)

つまり、この日の舞台ではZXのほうが上で、ラグジュアリーセダンに近い上質なマナーを披露してくれた。ただし、オフロードでは当然ながら、ダカールラリーのノウハウを注入したGRスポーツに軍配が上がるはずだ。

1つのボディで、ここまでキャラクターの異なるグレードを用意したこと。これも新型ランクルで特筆すべき点であると感じた。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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