打つ手なし!オミクロンで「米国金融政策」ピンチ 緩和のアクセルはもう使えないという袋小路
オミクロン株の出現は、間の悪いことに連邦準備制度理事会(FRB)が難しいかじ取りを迫られているタイミングと重なった。FRBは新型コロナ禍対応の景気刺激策からインフレ抑制へと政策の軸足を移そうとしている。
アメリカの中央銀行であるFRBは、完全に回復しきっていない雇用を下支えしようと、2020年3月に事実上のゼロ金利政策と国債などを大量に買い入れる量的緩和策を復活させて以降、緩和策を維持してきた。ところが、ここに来てインフレが加速。物価上昇ペースに対する警戒感が高まる中、景気刺激と物価コントロールの両立を迫られるようになっている。
オミクロン株で「引き締め加速」の可能性
新たにインフレ対応が必要になったことから、オミクロン株がアメリカの経済と雇用に打撃を与える展開になったとしても、FRBはショックに十分に対応できない可能性が出てきている。それだけではない。この変異株によって31年ぶりという現在の物価上昇の背後にある供給制約に拍車がかかれば、金融政策の引き締めペースが一段と加速することさえ想定される。
「FRBはこれまで、新型コロナの流行の波が来るたびに景気の下押しリスクにフォーカスした緩和策で効果的に対処することができていた。しかしインフレのせいで、もはやこうした対応はとれなくなった」とジェフリーズのチーフ金融エコノミスト、アネタ・マーコウスカ氏は指摘する。
オミクロン株は確認されてから日が浅く、公衆衛生や経済に及ぼす影響は未知数だ。しかし工場などの一時閉鎖や従業員の自宅待機が広がれば、サプライチェーン問題が深刻化し、FRBにさらなる問題が降りかかるおそれがある。
FRBのジェローム・パウエル議長も、インフレへの懸念を強めている。
「全体としていえば、現在の物価上昇は需給の不均衡と関係しており、その不均衡は直接的にはパンデミックと経済の再開に由来している。とはいえ、ここ数カ月で物価上昇がより広範なものになってきたのも事実だ」。パウエル氏は11月末に議会でこう証言した。「インフレ上昇のリスクは高まっていると思う」