打つ手なし!オミクロンで「米国金融政策」ピンチ 緩和のアクセルはもう使えないという袋小路

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縮小

FRBは当初、サプライチェーンが正常化し、工場が受注残をこなせるようになれば、2021年に跳ね上がったインフレは急速に収まるとみていた。ところが、物価は30年ぶりのペースで上昇を続けている。

こうした状況を受けて、パウエル氏らFRB幹部は「インフレ退治」へと金融政策の路線を切り替えた。

パウエル氏は11月末に、国債買い入れのテーパリング(段階的縮小)の前倒しを検討することになると発言。市場では2022年3月中旬までに量的緩和が終了するとの見方が有力になっている。FRBは11月上旬、それまで毎月1200億ドルのペースで進めていた国債買い入れの縮小に踏み出している。

量的緩和終了の前倒しの先にあるのが、伝統的かつ強力な政策ツールである政策金利の引き上げだ。

利上げ時期が早まれば、インフレ抑制にはプラスでも経済成長や雇用にはマイナスとなる。確かに失業率は急速に下がっており、11月には4.2%まで低下したが、それでも就業者数はコロナ前の水準をなお400万人近く下回る状況が続いている。中には年齢的な理由で現役を退いた人もいるだろう。ただ各種調査などからは、育児の問題や新型コロナに感染したり感染させたりする不安から仕事への復帰を避けている人が多い現状が浮かび上がる。

FRBの景気刺激策がなくなれば、事業の拡大ペースや雇用が鈍り、労働市場の回復はさらにゆっくりとした、たどたどしいものとなりかねない。

「人手不足インフレ」は抑制不能?

しかしFRBが迫られているのは、これまでの景気のサイクルとは異なるかじ取りだ。目下、人々に仕事への復帰をためらわせている要因の多くは、FRBが影響力を及ぼせる労働需要とは関係がない。企業が採用に血眼なる中、求人件数は急激に増加。人々は歴史的なペースで仕事を辞めており、短編動画投稿アプリTikTok(ティックトック)では「仕事辞めました」動画がトレンドになっている。

実際、労働市場が少なくとも一時的に逼迫したことは、持続的なインフレの一因となりそうだ。採用競争が激化し、雇用される側も生活費の上昇を理由に賃上げ圧力を強めるようになったことから企業は今、急速に賃上げを進めている。FRBは賃金関連のデータの中でもパンデミック絡みの要因に左右されにくい雇用コスト指数を注視しているが、同指数は直近で大幅に上昇し、政策担当者の目をくぎ付けにした。

企業が賃上げを進めるとすれば、賃上げのコスト捻出のための値上げも進むはずで、そうなればインフレは一段と進行する。事実、すでにそうした傾向になってきたことを示す兆候は地区連銀経済報告(ベージュブック)にも現れるようになっている。

(執筆:Jeanna Smialek記者)
(C)2021 The New York Times Company

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