DCIで測った「都道府県別デジタル度ランキング」 2021年には地方で進展し、地域間格差が縮小

拡大
縮小

前述したように、2021年はデジタル公共サービスが特に地方部で相対的に進んだことで、地域間のデジタル格差が縮小した。ではさらに地域間のデジタル格差を縮小させるためにはどうすればよいのか。

地方部はコネクティビティーの改善を

筆者は、まず地方部の「コネクティビティー」の改善が必要だと考える。前述したように、デジタル度の4つの構成要素の中で、地域間格差が最も大きいのがコネクティビティーであった。そしてコネクティビティーの改善は、その県の住民に便益を与えるだけでなく、他県(特に大都市圏)からのテレワーカーやワーケーション需要を取り込む可能性がある。

これまでも、徳島県神山町のように、高水準な通信インフラの整備によってIT企業のサテライトオフィス誘致に成功した事例はあるが、「企業の誘致」というと事が大きい。それに対して、コロナ禍が契機となったテレワーク制度の浸透は、「ヒトの誘致」(短期間滞在だったとしても)の可能性を広げたという点で大きな意味を持つと考えている。さらに国土の強靭性という観点からも、地方部に高水準のネットワークインフラが整備されていることは大きな意味を持つ。

本稿で述べたようなことは、デジタル度が「見える化」されて初めて議論が可能である。格差が大きな領域は何なのか、昨年と比べてデジタル化は進展したのか、デジタル政策の効果はあったのか、などオープンかつ客観的な議論を進めるためにも、DCIのような指数は重要だと考えている。

森 健 野村総合研究所 未来創発センター グローバル産業・経営研究室室長

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もり たけし / Takeshi Mori

専門はデジタル・エコノミー、グローバル経営。共著書に『デジタル資本主義』(2019年度大川出版賞)、『2010年のアジア』、『2015年の日本』(いずれも東洋経済新報社)など。

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