中野 どうせ何をやっても無駄なのに、と思っている人たちが、何かをやろうとして熱くなっている人を見ると、なんだかムカツクと。
藤野 そう。あれはきっとイラダチなんですよ。
渋澤 今の時代、自分が動かなくても情報が入ってくるじゃないですか。海外に行かなくても、海外のニュースや映像なんかは、タブレットでも簡単に見れちゃう。昔は現地まで行かなきゃ見られませんでしたけど、今は本当に情報が発達しているので、現地まで行く必要がない。動かなくてもいいやって考える人も、それは増えるでしょうね。
デフレが「何もしない人」を大量生産した?
藤野 大学生に「海外に行きたい人、手を挙げて」と言うと、手が挙がらない。自宅と学校の往復で結構、満足しているみたいです。今の日本って、生ぬるい幸福感があるのでしょうね。これが本当の地獄だったら、何とかしてそこから抜け出そうとするじゃないですか。
中野 だから、これはもう20年以上にわたって続いたデフレの影響としか言いようがないでしょう。何しろデフレは何もしない人が勝つわけですから。完全に毒が回ったという感じがします。20年も経済が成長しない中で生きてくると、人間の体質も大きく変わってしまう気がします。
渋澤 ただ、自分で何かをしよう、世の中を変えていこうと考えている人って、昔からそうは大勢いなかったような気がします。私自身が30代の頃は日本の景気全般が絶好調でしたから、本当に明日のことしか考えていなかったんですよね。自分が音頭を取って、世の中のためになる何かをしようとは、微塵も考えていなかった。その当時に比べると、かえって、今の30代の方が世の中を変えていこう、何か役に立つことをしようという気持ちを持っている人が多いような気がします。
藤野 確かに、大学で教えていてそれは感じます。世の中を変えたいと思っている学生の比率は、この10年間で0.5%から1.5%くらいにはなったような気がします。ただ、ここでもうひとつの問題があるのですが、何もしない連中が、頑張ろうと思っている人たちのことを揶揄するんですよ。「アイツって意識高い人だよね」ってね。意識が高いという言葉は決して悪い意味ではない。でも、それが揶揄される対象になってしまっているのです。
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