COP26での「3つの成果」日本は今後どう生かすか 1.5度目標に強化、石炭火力削減を明記した意義
さらにCOP26の成果としては、温暖化の最大要因として石炭火力発電の削減が初めてCOP決定に明示されたことが挙げられる。議長国イギリスのジョンソン首相は、COP26の前に各国に4つの具体策、すなわち石炭火力発電の廃止計画および電気自動車の普及、発展途上国への資金支援、植林の推進を呼びかけていた。
中でも石炭火力発電について、「先進国は2030年に廃止、途上国は2040年に廃止」を要請していた。その声に応えて、1週目に開催された「脱石炭連盟」のイベントでは、新たに28の国や地域などが石炭火力発電の廃止を約束した。加えてCOP26決定文書に石炭火力発電の削減が書き込まれた。
実は当初のドラフトでは「石炭火力発電の段階的廃止」が盛り込まれていたが、産油国やインドなどの新興国が強く反対し、表現は「段階的削減」にとどめられた。しかしそもそも国際条約の会議では、内政干渉になりうる各国のエネルギー選択などの国内政策に触れることはほとんどない中で、COP決定文書で石炭火力発電について言及されたのは、それだけ石炭が温暖化の最大要因として世界中で認識されていることを示している。石炭火力発電への風圧は国際的に一段と高まったと言える。
再び化石賞受賞の日本、資金支援増額がかすむ
世界120カ国から首脳が集まったワールドリーダーズサミットに、日本の岸田文雄首相も衆議院議員選挙の直後であるにもかかわらず駆け付けた。日本も2030年度に46%削減、さらに50%の高みを目指す、そして2050年ゼロという目標を持っていることで、今回はリーダーシップを発揮する側に入ったことは確かだ。
さらに途上国への資金支援として新たに5年間で最大100億ドルの追加支援を行う用意があると表明した。実はCOP26のもう1つの重要な議題は、先進国から途上国に対して年間1000億ドルの資金を振り向けることが決まっていたにもかかわらず、その額に達していない問題をどう解決するかであった。十分ではないが、その要請に応えた日本は、ジョンソン首相から繰り返し感謝の言葉をかけられた。
一方で「太陽光などの再生可能エネルギー普及のためには火力発電が必要」であるとして、アンモニアや水素などによって火力発電のゼロエミッション化を図り、それらを国内のみならず、アジアにも展開すると演説した。これはむしろ石炭火力発電の延命策だと受け止められ、環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」(CAN)から温暖化対策に後ろ向きである国への不名誉な賞「化石賞」を再び贈られてしまった。
「2030年に向けてのアンモニアなどは製造時にまだ化石燃料を使うことが多く、混焼してもCO2の排出削減効果は限定的で、むしろ石炭火力の延命に手を貸す」というのがその理由だった。2030年度に50%削減の高みを目指すという削減目標や、資金支援増額などに対する評価がかすむ残念な結果となった。
1.5度の長期目標が主流となったパリ協定時代に、日本に求められることは、2030年度の46%削減目標を確実に実施できる政策を早急に導入することである。石炭火力発電を、2030年度を越えて使い続けることを前提としたエネルギー基本計画は早急に見直すべきである。
またパリ協定第6条のルールが決まった中、国内で排出量を取引する市場を早急に整える必要がある。パリ協定が本格始動する中で日本企業がきちんと活動できるようにするためにも、国内政策を整備することが今、最も求められている。
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