COP26での「3つの成果」日本は今後どう生かすか 1.5度目標に強化、石炭火力削減を明記した意義
COP26以前には、パリ協定事務局に提出された各国の削減目標を足し上げても1.5度はおろか2度未満達成にもまったく足りなかった。会議直前の国連報告書によれば、各国の2030年削減目標を考慮しても、世界全体の排出量は2010年比で2030年に16%も増加し、世界の平均気温は2.7度も上昇してしまうと警鐘が鳴らされていた。
そのため国連は世界各国に対して、2030年目標を大幅に引き上げてCOP26において再提出することを強く要請していた。イギリスのジョンソン首相はCOP26の第1週目に「ワールドリーダーズサミット」を主催し、世界120カ国から各国首脳が参加して削減約束や資金援助などを発表することとなった。
先進国のほとんどはCOP26までにすでに2050年ゼロと2030年に50%前後の削減目標を公表していたために、そこでは新興国が新たに目標を見直して発表するかに注目が集まった。残念ながら中国とロシアの首脳は欠席し、世界一の排出国である中国から目標の引き上げ表明はなかったが、世界第3位の排出大国であるインドは、2030年に再生可能エネルギー比率50%を目指し、さらに2070年には排出ゼロを目指すことを公表。またタイやベトナムといった発展著しい途上国も2050年カーボンニュートラルの目標を初めて発表した。
2度未満が視野に入った
長期目標の強化に加えて、メタンガスを2030年までに2020年比で30%削減する「グローバル・メタン・プレッジ」を欧州連合(EU)とアメリカが中心になって呼びかけ、世界100カ国以上が賛同したことも特筆される。メタンガスはCO2の20倍の温室効果を持つガスであるため、この効果は少なくない。
これらの結果として、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、「今後の気温上昇の予測は1.8度まで下げられた」とCOP26会場で明言した。ドイツやオーストラリアの研究機関も同様の予測を発表した。もちろんこれは「各国が2050年排出ゼロなどの長期目標を実現した場合」という前提であり、実際には各国はその具体的な実現策をまったく示せていないため、数字上の成果にすぎない。しかし、パリ協定の長期目標である2度未満が初めて視野に入ったことは、会議参加者を勇気づけるものであった。
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