吉田カバンの売れ筋に見た仕事用バッグの大変化 コロナ禍で久しぶりの出勤は荷物が増える

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コロナ前と現在で変わったのが、出張・旅行と会食の激減だ。これらもバッグの使い方に影響した。「ボストンバッグは本当に使わなくなりました」(別の30代男性)という声を聞いたが、以前多かったキャスター付きのキャリーバッグを見る機会も減っている。

会食では、コロナ前は取引先とハードルの高い店に行く機会があったかもしれない。そうなるとふだん使いのバッグでは気が引ける。重要な役職を務める女性も増え「プレゼンテーションの場でも持参できるようなバッグが欲しい」という要望に応えて、上質感のあるバッグを開発したメーカーもあった。

それが今はどうか。コロナ禍で通勤回数が減っただけでなく、あらたまった会食やパーティーも減り、多くの人が格好をつけなくなった風潮があるのではないだろうか。

この話を紹介したのは、現時点では「TPOで変えるよりも汎用性のきくバッグ」を選んでいるように感じるからだ。今後の流れ次第ではTPO重視が戻るかもしれないが。

コロナ前まで好調だった「鞄市場」だが…

最後に、少し引いた視点で業界全体についても説明したい。

国内の鞄・袋物市場はコロナ前まで好調だった。国内外の出張や旅行ニーズに加えてインバウンド(訪日外国人)需要も大きかったからだ。それがかなりの部分で消滅し、繰り返し発令された緊急事態宣言による「店舗の営業自粛」で各社の業績は落ち込んだ。

ほかのメーカーと同様に吉田カバンも影響を受けたが、とくにトラベルバッグ中心のメーカーは大打撃だった。「ヒトの移動が激減」で影響を受ける業界は旅行やホテル、外食業だけではないのだ。

一方、在宅勤務が増え、息抜きを兼ねて近所のコンビニや商店で頻繁に買い物するようになった。近場外出で「携帯とバッグ一体型のスリムなバッグを持つ人が増えた」(30代女性)という指摘もある。ようやくそこから本格外出ムードに流れが変わってきた。

バッグ選びには消費者心理も透けて見える。まだコロナ前の華やいだ感じにはならないだろうが、「どんなバッグで出かけるか」の参考にしてもらえれば幸いだ。

東京・JR新橋駅前「SL広場」のSLもイルミネーションで飾られていた(11月中旬、筆者撮影)
高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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