開発協力の本領発揮に必要な「巻き込む」農業支援 多様なステークホルダーと「ミンダナオ和平」
農業支援に地元研究機関を巻き込む
高木:落合さんの書かれた『フィリピン・ミンダナオ平和と開発』では、農業分野の開発協力にも触れていて、これはまさに能力開発のよい事例だと思います。
この事業では、JICA(国際協力機構)と事業の受益者という二者間ではなく、フィルライスというフィリピン政府の機関を巻き込む場を設定された点が目を引きます。フィルライスの正式名称は、フィリピン稲研究所で、フィリピン政府農業省傘下の研究機関ですね。このプロジェクトでは、ミンダナオ島北コタバト州にあるフィルライスの支所と協力したとのことですが、ここで働いてる人たちは、地元の人が多いんですか。
落合:地元出身の人が多いですね。本にも出てくるサイリラ・アブダッラーという所長は、地元出身でムスリムなんです。その彼が、「自分はムスリムとして、何とか彼らをサポートしたい。自分がサポートできるのは農業なので、フィルライスの中で培ってきた、この研究成果を何とか活かしたい」と言っていました。でも彼でさえ、MILF(モロ・イスラーム解放戦線)の実効支配地域に行くのは怖いって言ったんですよね。そこで、「じゃあ一緒に組もうよ」ということになったのです。
高木:その事業は陸稲を普及させる技術支援ですが、これは今、どうなってるんですか。